第6話

ものの見方について②
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2024/07/31 22:00 更新
君は、
コペルニクスの地動説を知ってるね。

コペルニクスがそれを唱えるまで、
昔の人はみんな、
太陽や星が地球のまわりをまわっていると、
目で見たままに信じていた。

これは、
一つは、
キリスト教の教会の教えで、
地球が宇宙の中心だと信じていたせいもある。

しかしもう一歩突きいって考えると、
人間というものが、
いつでも自分を中心として、
ものを見たり考えたりする性質を持っているためなんだ。
ところが、
コペルニクスは、
それではどうしても説明のつかない天文学上の事実に出会って、
いろいろ頭をなやました末、
思い切って、
地球の方が太陽の周りをまわっていると考えてみた。

そう考えてみると、
今まで説明のつかなかった、
いろいろのことが、
きれいな法則で説明されるようになった。
そして、
ガリレイとかケプラーとか、
彼のあとにつづいた学者の研究によって、
この説の正しいことが証明され、
もう今日では、
あたりまえのことのように一般に信じられている。
小学校でさえ、
簡単な地動説の説明をしているようなわけだ。
しかし、
君も知っているように、
この説が唱えはじめられた当時は、
どうして、
どうして、
大変な騒ぎだった。
教会の威張いばっている頃だったから、
教会で教えていることをひっくりかえすこの学説は、
危険思想と考えられて、
この学説に味方する学者が牢屋ろうやに入れられたり、
その書物が焼かれたり、
さんざんな迫害はくがいを受けた。
世間の人たちは、
もちろん、
そんな説をうっかり信じてひどい目にあうのは馬鹿らしいと考えていたし、
そうでなくとも、
自分たちが安心して住んでいる大地が、
広い宇宙を動きまわっているなどという考えは、
薄気味が悪くて信じる気にならなかった。
今日こんにちのように、
小学生さえ知っているほど、
一般にこの学説が信奉されるまでには、
何百年という年月がかかってたんだ。
人間が自分を中心としてものを見たり、
考えたりしたがる性質というものは、
これほどまで根深く、
頑固なものなのだ。

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