講堂に入って、順番に座席に座る。B組だからだろうか、席は中央の列で、よく目立っていると感じた。講堂の後ろの方の席には、入学生の親たちがすでに待機していた。スマホを構えている人もいた。一生に一度の高校の入学式。思い出に残したいと考えるのは妥当なことで。
入学式が始まり、保護者席のさらに後ろにいた先輩と思われる人たちが校歌を歌い、祝いの言葉を壇上で述べた。そして、祝辞も終わり、式は校長の挨拶へと進む。
わかりきったことであった。それでも、講堂の中からはどよめきが巻き起こった。
校長は、真剣なまなざしでそれを伝えると、ぺこりと一礼して挨拶を終えた。今から、ここへの入学をやめるひとはいるのだろうかと思い、ちらりと横をみた。しかし、皆、決意の目をしていた。誰一人、心配や不安を抱えている人はいなかった。
私も、今からやめる気などさらさらなかった。確かに、桜山高校にはいきたいと願った。しかしここの講堂に座っている今、私の望みは桜山高校なんかではなく、確かに青境での生活のほうを向いていた。ここでしか味わえない、特別な何かがきっと待っていると、確信できたからだ。
だが、一つ懸念点があるとすれば、父だ。心配性なところがあるので、もしかすると先ほどの校長の話で気持ちが変わってしまったかもしれない、などと考えもした。
考え事ばかりしているうちに、気づけば入学式は終わり、私たちは講堂から退場した。
教室から解散し、昇降口の外で待っていた入学生の親たちの中に両親を見つけて駆け寄ったとき、心配顔の父に顔を覗き込まれた。
不安そうにしている父を、母が肘でつつく。それに一瞬顔をしかめたあと、父の顔からは心配は消えていた。隠れただけかもしれないが、それでも私にとっては安心材料にもなった。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。