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第6話

《一》2
6
2026/06/13 04:31 更新
講堂に入って、順番に座席に座る。B組だからだろうか、席は中央の列で、よく目立っていると感じた。講堂の後ろの方の席には、入学生の親たちがすでに待機していた。スマホを構えている人もいた。一生に一度の高校の入学式。思い出に残したいと考えるのは妥当なことで。
校長
それでは、これより第7回青境高等学校入学式を始めさせていただきます
入学式が始まり、保護者席のさらに後ろにいた先輩と思われる人たちが校歌を歌い、祝いの言葉を壇上で述べた。そして、祝辞も終わり、式は校長の挨拶へと進む。
校長
突然ですが、みなさんは、今ならまだ、やめることができます。この青境高校に入らなくてもいい。ここは、危険の伴う学校です。
それに少しでも決意がゆらぐなら、このあと担任に申し出るようにしてください。保護者の方、ご不安などございましたら、式終了後にご相談ください。入学金は返金いたしますし、実際受験していただいた学校へ通うことができます。今からお伝えするのは、この学校で行っていることです
わかりきったことであった。それでも、講堂の中からはどよめきが巻き起こった。
校長
青境高等学校では、犯罪抑制のため、学生たちが自らの力でそれに貢献していくための教育を行います。
警察には、犯罪を未遂に終わらせることは難しいですし、捜査にも限界があります。そこで立ち上げられたのが、我が校が所属している組織であります。犯罪が起こる前に、犯行者の引き渡しを行っていましたが、そこでも限界が見えてまいりました。
そこで、あなたがたのような、優秀な、そして犯行者の油断しやすい学生という人材を集め、犯罪が起こる直前に、被害を防ぎ、犯行者を引き渡すという使命の元、この青境高等学校を設立いたしました。
この制度は、国承認のもと極秘裏に進められたものです。守秘義務が発生しますので、くれぐれも、外部には情報を流さぬよう、ご協力をお願いします
校長は、真剣なまなざしでそれを伝えると、ぺこりと一礼して挨拶を終えた。今から、ここへの入学をやめるひとはいるのだろうかと思い、ちらりと横をみた。しかし、皆、決意の目をしていた。誰一人、心配や不安を抱えている人はいなかった。


私も、今からやめる気などさらさらなかった。確かに、桜山高校にはいきたいと願った。しかしここの講堂に座っている今、私の望みは桜山高校なんかではなく、確かに青境での生活のほうを向いていた。ここでしか味わえない、特別な何かがきっと待っていると、確信できたからだ。


だが、一つ懸念点があるとすれば、父だ。心配性なところがあるので、もしかすると先ほどの校長の話で気持ちが変わってしまったかもしれない、などと考えもした。


考え事ばかりしているうちに、気づけば入学式は終わり、私たちは講堂から退場した。
お父さん
やっぱり、不安じゃないか?綾芽、本当にいいのか?
教室から解散し、昇降口の外で待っていた入学生の親たちの中に両親を見つけて駆け寄ったとき、心配顔の父に顔を覗き込まれた。
桃園綾芽
うん。もちろん、ここでいい。…ううん、ここがいい。せっかく私の力を認めてもらったの。それに、私が役に立てるなら、ここで任されたものをちゃんとこなしたいって思ったから。心配かけちゃうかもしれないけど、私はここに通いたい。通わせてほしい
お母さん
そうね。綾芽がこう言っているから、ここに通わせましょう。綾芽、ちゃんと頑張るのよ
桃園綾芽
うん。ありがとうお母さん
不安そうにしている父を、母が肘でつつく。それに一瞬顔をしかめたあと、父の顔からは心配は消えていた。隠れただけかもしれないが、それでも私にとっては安心材料にもなった。

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