少し声を大きくした瞬間、小太郎の肩がビクッと動いた。
清春に怯えていた。
俺と付き合ってるって言いたいのに言えない。
清春は病室から出ていった。
清春を「今」加入したという事にした。
すぐに市川くんはそれに対応した。
清春の前の存在を無かったことにされるのに耐えきれず、さつきとみなとは病室を出て泣いた。
小太郎は清春が関係すること、何もかも忘れてしまった。
医者は、
「目の前で無理やり行為をされた現実に耐えきれず、脳がその記憶を無かったことにしようとしてるのだと思います…」
と言った。
清春の感情は「悲しみ」を通り越して、涙が出なかった。「絶望」だった。
小太郎の中で清春は「愛しい人」から「知らない人」に変わった。
小太郎が仕事を早くしたいとのことだからメンバーは仕事を再開した。
小太郎がSNSを再び始める前に、公式アカウント、小太郎以外のメンバーのアカウントで、小太郎が清春のことだけを忘れていることを説明した。
「小太郎は何も覚えていないから、苦しませないように清春とは新メンバーとして接してください。」
と載せた。
この投稿は小太郎に見られたらまずいので、
1週間で消した。
小太郎は退院して仕事を再開した。
「小太郎退院しました!
どうやら過労で階段から落ちちゃった見たいです汗汗
みんなも気をつけてね!
あと目覚めたら新メンバーいてびっくりした!六花清春くんって言うんだって!」
この投稿を見たら清春のことを忘れているのを信じざるを得なかった。
「新メンバーかっこいいね!」「こたくんと似てる!」
ファンはすぐにそれに対応してくれた。
この光景が何よりも清春を苦しめた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。