あの女に絡まれても厄介だしな。
と言って、荷物を持ってくれる樹さん。
そういって、軽々と荷物をもつ樹さん。
そんなひょろっとした体のどこに力があるんだろう…
と、少し気になる。
ちょっと気になって。
ピトッ…
樹さんの腕に少しだけ触れた。
樹さんからすれば、いい迷惑だろう。
ちょっと赤くなった(ように見える)樹さんは、ドアを開けて、
固まった。
そこには…
不敵に笑う、桃華さんがいた。。
やれやれと、呆れたように首を振る桃華さん。
その言葉を聞いた時…
プツン、と
何かが切れた。
ついたのは、
非常階段の踊り場
桃華さんは私にズンズンと近づき
大きな目をこれでもかと見開いていった。
その言葉は…
私を完全に怒らせるには
十分すぎる着火剤だった。
そう言い切ると…
目の前には。激昂する桃華さん。
樹さんが辛そうに言ったあの言葉。
最近みる北斗さんのぬぐいきれない疲労感…
その全てが、この女性が元凶になっているのだから。
ドンッ!
最初は、何が起きているのかわからなかった…
見えたのは…
非常階段の裏側と…
怯えたような顔をして、逃げる桃華さん。
そして、床が迫る…
ゴンッ…
その音と共に、私は記憶を手放した。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。