歓迎会が終わり、ヘロヘロな基くんは横原くんがタクシーで一緒に、ほかのメンバーは電車でみんなで帰ることになった。
基くんは横原くんの肩を借りてなんとか立てるくらいだ。
ぽん、と頭に手を置かれて、わしゃっと髪の毛を撫でていった。
どうしてこの人は不意打ちなんだろう。
こんなことをされてときめかない人がいるだろうか。
一部始終を見ていたメンバーからどよめきが起きる。
そのままタクシーに押し込められていった。
みんながざわつく中、黙り込んでいるメンバーが1人。
きっと基くんはいろんな女の子に同じことをしているんだろうし、期待してはいけない。
しばらく歩いてみんな落ち着いてきたころに、かげが話しかけてきた。
あんなにいつもにぎやかなかげが、その会話の後何もしゃべらなくなった。
何かしゃべらなければと思っても何も浮かばず、そのまま沈黙が続いた。
駅チカのお店だったはずなのに、やけに遠い。
深夜だからか、かなりスピードを出した自転車が後ろから近づいてくる。
声をかけてくれたおかげですぐ気づいて歩道側によけた。
2人の後ろを歩いていた奏、新は、咄嗟に影山があなたの苗字の背中に手を伸ばしかけたが、触れずに悲しくおろされる手を見ていた。
新もようやく察したように、奏と顔を見合わせた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。