第16話

【16】
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2024/06/27 14:46
ほんっっっっっっっっっとにごめん!!
記憶なくて、俺変なことしてない??
大丈夫だった??
2日後、基くんに会ったら廊下に呼び出され、開口一番に謝られた。

基くんはみんなから様子を聞いて焦っている様子だった。
あなた
いやいや、もう謝らないで…!
身内だけならいいけど外では心配だから気を付けてね?
はい、気を付けます…本当にごめん、こんなつもりじゃなかったのに…
ただあなたの苗字さんと仲良くなりたかっただけで…
きっとその言葉に嘘はない。
雨に濡れた子犬のようにしょんぼりした基くんを見ているとなんだかいたたまれない。
あなた
じゃあ、今度ランチでも行く?
え、いいの…?ほんとに…?
あなた
うん、奢ってね??笑
顔がぱあっと明るくなっていく。耳としっぽが見える気がする。

耳はぴんと立ち、しっぽが小刻みに横に揺れている。

ポメラニアンかチワワかな。
やった!!奢らせて!!日程調整してまた声かける!!
そうして基くんはニヤニヤしながら駆け足でみんなのいる部屋に戻っていった。

その後ろ姿はまるで投げたボールを追いかけている小型犬。


すぐ横原くんに何か言っているようだ。よかったじゃん、という横原くんの声だけは聞こえた。







今日は新曲のダンスの振り入れ。レッスン場でみんなの様子を見ながら、メールを捌いたりスケジュールを組んだりと事務処理を進める。



なかなかこういったタイミングでないと事務処理をする時間がないので、ありがたい時間ではある。



メンバーのみんなには悪いけどもう少し振り入れしていていいんだよ?という気持ち。笑



さすがばっきーは早くも振りが入ったらしく、あらたに教えている。








レッスン開始から2時間たった。


2時間たっても真剣な態度は変わらない。



けれどさすがに疲労の色がにじんできている。



結構ハードな振りだから何か冷たくて甘いものでも差し入れを買おう、と調べていると美味しそうなフルーツジュース屋さんをみつけた。



イチゴミルク、スイカスムージー、果肉たっぷり100%オレンジ…

うん、これにしよう。



一段落着いたし買いに行こう、とぱたんとノートパソコンを閉じた。





普段は7人集まると男子校のように大騒ぎ。でも仕事になるとみんな一生懸命。

本当に一生懸命という言葉はこういうことを表しているんだろうな。命を削っている感じ。



もう少しみんなのことを見ていたかったが、電話がかかってきたので財布を持ってレッスン場を後にした。



携帯電話の画面にはテレビ局の人が表示された。きっと新しい仕事の依頼だ。

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