〈玲於side〉
最上階に着いて
練習室に向かう途中の自動販売機で
あなたさんが好きないちごミルクを買う。
これあげたら
玲於ありがと!!
ってまたあの笑顔で笑ってくれるかな
とかそんなこと考えて
練習室のドアをそっと開ける
静かに中に入ると
やっぱりあなたさんが居て
あなたさん。
って声を掛けようとしたけど
途中で詰まった訳は
あなたさんの顔から雫が一つ零れたから
あなたさんは泣きながら
練習してて
………もう、泣かないで
とか、そんな冗談
あなたさんは優しく微笑んで
いちごミルクを受け取ろうとするけど
俺はペットボトルを離さない
ん?って顔で見てくるあなたさん
そう言うと、一気に顔が
笑顔から苦笑いに変わって
そう言って微笑んだあなたさんの顔は
すごく落ち着きがあって。
やっぱ大人だな
ってふと思った
〈あなたside〉
って、言ってくれる玲於
じゃあそうするね。
って返して
マネキンに男性用のカツラを被せて
アレンジしていく
それもそうだけど、
一番心にグサッってきたのは
”そんなに玲於が好きなら玲於と付き合えば?”
って言葉。
私はちゃんと、
涼太のことが好きなのに。
全てを否定された気がして
急に玲於がそんなこと言い出すから
そう言って
またマネキンの後ろにある椅子に座った玲於
今気づいた
ヘアメイクを辞めて
玲於の前の椅子に座ってから携帯でホテルを調べる。
空き部屋あるところはあるけど
結構な値段するし。
安いところは空き部屋がない。
困ってたら
前から
なんて、そんな言葉
大丈夫っす。
まじで変なことしないんで。
って言ってる玲於
いや、でも手料理が食べれるなら
仲直りはしなくていいかもっす。
とか言ってる玲於に笑って
今日はもう帰って
夜ご飯の買い物
そんなこと言いつつも取ってきてくれる玲於は
本当に優男だと思う
帰り道でも袋は重い方を持ってくれて
車道側を歩いてくれる。
重い?って聞いたら重くないっす!
ってすごい笑顔
家に着くと
片付けてないかも…って心配レベルの汚さじゃない
逆に綺麗で、背筋が伸びる
それからは唐揚げ作って
玲於が食べたら
それでまた笑って気付いたのは
すごく自然に笑えてるようになってること。
こんなことがあって
すごく落ちてた気分が一気に上がって
玲於はやっぱりすごいな。
って笑いながら思ってた
この時、今までの気持ちの蓋が
開きそうになってることは自分も知らなかった
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。