2人での撮影は終わったのだが、祐希単体でのものがまだあるらしく、そんなにかからないみたいなので、ちょっと話したいこともあったということで、せっかくならと待たせて貰うことにした。
真面目な顔して、受け答えをしている姿はあんまり観察することないので、きっと授業参観に来て我が子どもを見守る親はこんな感じなのかなと気恥ずかしさを覚えながらも、やっぱり慣れているなという印象を受ける。
あ、もう終わったのか、本当に簡単なものだったのだろう、思っていたよりもすぐに終わった。
石川「何、待ってたの?」
「うん、待ってた」
撮っている様子を覗いていた俺に気がつき、近づいてきた祐希は少し恥ずかしさを感じているような表情をしながら、そう聞いてきた。
石川「別に、先に帰ってたらよかったのに」
「いや、そうなんだけど、せっかくの休みだしそのままホテルに戻るのも、もったいないかなって思ってさ」
「何かどっかでお茶しない?」
石川「あ、うん、いいけど」
「おし、じゃあ早く支度して、俺もう準備したから」
石川「あ~、はいはい」
せかすように祐希の背中を押して、控え室へと促した。
カフェの席に座って、2人分のコーヒーがテーブルに並ぶ。
「でも、誘っちゃって良かった?なんか戻ってやることとかなかった?」
石川「うん、まぁだいじょぶ」
石川「あなたとの時間だし、せっかくならね」
「そっか、ならいんだけど」
急に誘っちゃった訳だし、祐希にもスケジュールがあるよなと今になって考えてしまった。
「でも、まさか祐希と一緒にテレビ取材するようになるとは思わなかったわ」
石川「これからもっと増えるかもよ」
石川「今年パリでもしメダル取ったも、まだ代表でやるつもりでしょ?」
「うん、まぁそれはもちろん、今のところはそのつもりだけど」
「でも、俺が最終メンバーになると決まってもないしなぁ」
智さんも小川もいるし、きっとリベロ枠は1人だろうから、その一枠を3人で争うことになる。
「まぁ俺はやれる限りバレーはやるつもりだし、バレー好きだから」
石川「そっか、良かった、俺もまだまだ一緒にやってたい」
「でも、バレー続けたとしても、取材が一緒になるのが増える訳ではないんじゃないの」
「世界のイシカワと俺じゃ全然、格が違うし」
石川「おい、だからそれやめろよ」
「はいはい笑、でもほんとだし」
石川「でもあなた、まだまだ上手くなるでしょ、俺はわかってるし」
石川「上手くなったら、それだけ注目されて取材されるから」
「なに、俺と同じとこまで来いって言いたいの?上からだなぁ笑」
実際に去年VNLでメダルが取れたのも、オリンピックに出場が決定したのも、その大きな要因になっているのは知ってるし、祐希がバレー界に大きな影響をもたらしたことはわかっているつもりだ。
「世界のイシカワに追いつけるように精進しますわ」
石川「そんなつもりで言ってないって」
「いや、わかってるって笑」
「あ、そうだ、言いたいことあるの忘れてた」
伝えておきたいことがあって、この場をセッティングしたことを忘れるところであった。
石川「ん、なに」
「俺、恋人と別れたんだよねぇ」
石川「え、…そうなんだ」
「うん、取り敢えず、ご報告」
「大丈夫だと思うんだけど、もし俺がちょっと様子おかしかったら、言ってくれない?」
「もしあれだったら迷惑かけちゃうだろうから」
石川「いや、それはもちろん」
「あでも、キャプテンにする話じゃなかったか、色々考えることあるだろうに」
石川「それは大丈夫だけど…」
「まぁ気づいたときでいいから、他の人に心配かけちゃうと良くないしさ」
石川「うん、わかった」
うん、何か打ち明けたらスッキリした気がする、まぁ大塚にはもうバレてるんだけど。
人を選ぶ内容であるので、必然的に言える人が限られてくることになるから、話せるのは大きい。
石川「…あのさ、」
「うん、どした?」
石川「んぁ、いや、やっぱいいや」
「そう?何かあったら言ってよ?」
少し考えた後、そう取り消した祐希に疑問を覚えながらも、話したくないような話を無理やり聞くような趣味はないので、負担にならない程度に言葉を返す。
石川「うん、わかってる」
「あ、どうする、そろそろホテル戻る?」
石川「ん、そうしようか」
少し残っていたコーヒーを飲み干し、俺が誘ったということもあるので、先に取られる前に伝表をかっさらっては会計を済ませた。










編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。