第8話

何故だろう
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2023/01/22 00:22
千代は桂の後ろ姿を見送った。

窓辺から覗く街角は明るくなるにつれて賑やかになり人通りも多くなってきた。


銀時「ほら、誰かに見られたらまずいから」


「そうだね」


銀時は視界を塞ぐように
そっと窓を閉め、障子を閉めた。


その間も桂を見ていたけど、
振り返ってはくれなくて。
千代は切ない気持ちになった。



障子を閉める手が伸びて、
銀時の横顔が千代の近くにくる

「ねぇ銀時、何歳になった?」



「ん?27」

「そう...」



考え込む千代に銀時が返す。

「千代何歳?」


「20歳...」

「バカ?」


「本当だよ!!どう考えたって20歳だもん」


「まぁ...」


銀時は改めて千代を見る。
あの頃と変わらない張りのある顔は
きめ細かくてシワもない。


「やめて!」


ドンっ!!!と千代がいきなり銀時を押した。


「いって!何だよ」




「いや...ごめん...あれ?」


千代は何故か銀時ではないダレカが脳裏に過り、
その手は自然に銀時を押しのけていた。



「大丈夫か?震えてるぞ」

「うん、大丈夫。大丈夫」


そう言う千代も何で震えているのか分からず、
大丈夫と言うしかなかった。



「そうだ!私、定治にご飯あげる。餌の場所教えてよ」


「お?おう。神楽!定治のご飯、教えてやれ!」


「んー!わかったアル。千代こっちネ」


千代はパッと立ち上がり神楽の元へ向かう。

千代は未だ震える手を見ながら、何かの違和感を感じていたが考えても分からない。

ひと呼吸して、切り替えることにした。










「....あいつのあんな顔初めて見た」



銀時は千代一瞬、絶望にも似た驚愕の表情をした気がして驚いていた。


千代は泣き顔を見せた事はないし、
人を憎むような事はないはず。


憎悪にも似た表情に銀時は驚いてしまった。







定治と神楽と微笑む千代。
表情は戻っていて、千代はいつも通りに戻っていた。




「(それにしても....20歳って本気で言ってるのか?)」


千代が、嘘を言ってる気はしないし
嘘をつく意味もないはず。



銀時は聞こえないようにため息をつくと、
ソファに腰掛け千代を見守った。

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