定春と一緒に千代と桂が帰宅する。
銀時が出迎えてくれるが、
寝起きであまり頭が働いていないようだ。
考えているようで何も考えてない顔だ。
「あれ?なんでヅラがいんだ?」
「銀時、お前。千代を頼むって言ったよな。」
「ちょっと!小太郎、銀時は何も悪くないでしょ。それに散歩しに行っただけよ。ね、定春」
「わん!」
定春はすっかり千代と仲良くなっていた。
桂の怒りも、銀時の覇気のない返事と千代の言い分もあるのでおさまった。
なんだかんだで朝食の時間。
新八が作ったご飯を皆で囲んで食べた。
「いや、ヅラもかよ!」
「1人や2人変わらんだろ、すまないなメガネ君」
「いえ、おかまいなく」
「オイ、コイツ誰よりも米食ってやがるネ」
「あははは」
千代が笑う。
すると、銀時も桂も手を止めて千代を見つめるではないか。
「え、なに?」
それに驚いて千代は聞き返すが
2人は何でもないと言ってご飯を食べ出す。
何なのだ。
千代はそんなに笑い方が変だったのか?と思ったが、銀時や桂は違った。
あのような朗らかで明るい千代を見るのは、
とても久しぶりで懐かしかったのだ。
神楽と新八も千代の笑顔には心が温かくなった。
「神楽ちゃんは銀時といつから一緒に暮らしてるの?」
「結構経つネ、銀ちゃんがどうしても私に居て欲しいってせがむから仕方なく一緒にイルネ」
「神楽ちゃん、嘘はやめようね」
新八が止める。
「千代さんはその...昔の事とか覚えてますか?」
どこまで記憶があるのか、銀時や桂は聞きづらかったのだがなにも知らないが故に新八はスムーズに聞く。銀時と桂はその返答をご飯をかき込みながら耳をダンボにして聞いていた。
「うーん....そうだなぁ」
千代は箸を持ったまま頬に手を充てて思い出そうと思考を巡らせる。
「小さい頃からお父様の部下と打ち合いの練習をしていたよ。小さい頃からずーっと剣術を訓練してて、女性だから力じゃどうしても男の子に負けちゃうでしょ?負けないようにピリピリしてたね、負けず嫌いだったと思うし」
「確かに千代は負けず嫌いだ」
「あぁ、そりゃ絶対だ。」
桂と銀時は頷く。
「攘夷志士になったきっかけは?」
「お父様が幕府からの援助金を切られてしまってね。父も母もそのせいで仕事を無くしてしまったから、しばらくは私がお金を稼ぎながら支えていたの。でも、そんな父も母も戦争の激化で亡くなった。途方にくれて攘夷志士になってさ、そしたら小太郎達と出会ったわ」
「大変でしたね....」
「まぁね、援助金に頼りきってた父もいけないから、何とも言えないわ。私をお金のためとはいえ、変なところへ売らないで居てくれただけでも感謝するわ」
「桂のどこが好きあるか?」
「銀時、ふざけるな。千代、ご飯が冷めるぞ」
銀時が謎に神楽の真似して聞いたが、
小太郎が遮った。
「あ、うん。」
好きな理由....千代は記憶が飛んでいるので
中々思い出せない。
でも、本当に本当に大好きなのだ。
「小太郎の事、私は大好きよ。」
「あぁ」
なら、何故あの時お前は俺を刺したんだ...?
記憶のない千代にそんな事言える訳もなく、
桂は一つ返事をして食事を続ける。
その様子に千代は自分が桂には好かれていないのだと少し切なくなったのだった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。