第46話

絶望の足跡
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2026/09/03 03:00 更新
アビス出現から数日後の土曜日。

支部全体が慌ただしかった。


いつもの空気ではない。
 

誰もが緊張している。



廊下を歩く職員達も。

部隊員達も。


皆どこか焦っていた。


それほどまでに。



Sクラスという存在は異常だった。
第七部隊は調査任務を命じられた。



戦闘ではない。

偵察。


接触禁止。



発見した場合は即撤退。


それだけだった。
Vau
接触禁止か
ばぁうが資料を閉じる。
Pretz
珍しいな
ぷりっつも言う。



いつもなら討伐前提。


だが今回は違う。



支部長自ら。


絶対に戦うな。





そう命令した。
山岳地帯。

昼過ぎ。


6人は慎重に進んでいた。


辺りは静かだった。


静かすぎた。



鳥の声がない。

虫の音もしない。


風だけが吹いている。
Lapis
…変やな
らぴすが周囲を見る。


木々は枯れていた。

地面はひび割れている。


魔獣の痕跡というより。


災害跡。


そんな光景だった。
Tigusa
気持ち悪いッ…
ちぐさが小さく呟く。


誰も否定しなかった。
さらに進む。

すると。



巨大な爪痕が見えた。


山肌が抉れている。




まるで。


巨大な刃物で切られたように。
Light
これ…一体でか?
らいとが目を見開く。
Rinu
…そうらしい
莉犬が答える。



そして。

全員が黙った。




その時だった。



ゴォォォォォ……


遠くで何かが動く音。



地面が揺れる。


小さく。



だが確かに。

揺れた。



6人が顔を上げる。



そして。

見えた。





遠くの山。


その向こう。



黒い影。


巨大で、圧倒的。




アビスだった。


誰も喋れない。

ただ見てしまった。



その姿を。

山の向こうにいる。



それなのに大きい。



異常だった。



魔獣
ッグォォォォォォォォッッ!!!!
咆哮。



次の瞬間。


衝撃波が山を越えて届く。




ゴォォォォッ!!


Tigusa
ッッ来る…!!
ちぐさが、風の能力でいち早く気がつく。



6人が踏ん張る。



木々がなぎ倒される。


距離はかなりある。




それでも。


これだけの威力。



ありえない。
Rinu
ッ撤退!
莉犬が即断した。


迷いはない。



戦う相手じゃない。




今は。

絶対に。
Vau
ッ急ぐぞ!!

6人が走り出す。



その時。


バキッ!!!。



遠くで山が崩れた。



誰も振り返らない。


振り返りたくなかった。


だが。


音だけで分かる。




アビスが動いた。

ただ歩いただけ。


それだけで。

山が崩れた。
数十分後。

支部。


報告会。


6人は帰還していた。



そして。

誰もが同じ結論を出した。


隊長
無理です
第一部隊。
隊長
勝てません
第二部隊。
隊長
現戦力では不可能です
第三部隊。



重い空気。


誰も楽観視していない。



そして、莉犬も言った。
Rinu
正面から戦ったら…負けます




第七部隊ですら。


そう判断した。

会議後。

屋上。

夕焼け。


6人は並んで座っていた。


珍しく。

誰も騒がない。
Vau
…やばいな
Light
やばい
Tigusa
やばいね
語彙力が消えていた。


それほど衝撃だった。



すると。


らぴすが空を見上げる。
Lapis
…でもさ
皆が見る。
Lapis
まだ戦ってないやんな
Lapis
偵察しただけやろ?

確かに。

強さは見た。


絶望も見た。



でも、

まだ本気でぶつかっていない。


まだ終わっていない。




すると。

莉犬が笑った。
Rinu
らぴぴのそういうとこ、好きだよ
Lapis
何それ
らぴすが少し困る。

皆も笑った。


少しだけ。

空気が軽くなる。
Pretz
まぁ…
ぷりっつが立ち上がる。
Pretz
考えるしかないな

Pretz
勝つ方法を
逃げる選択肢はない。
 

街がある。

守る人がいる。

家族がいる。


兄弟達がいる。



だから。

諦めるわけにはいかない。
その夜。

アビスはさらに進んでいた。



一歩。

また一歩。


市街地へ。



まるで。

終わりそのものが近付いてくるように。


誰もまだ知らない。



三日後。



第七部隊史上。

最大の戦いが始まることを。

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