⚠︎ネタバレ注意⚠︎
彼女と二人で出かけた日から数日が経った
すでに規定の勤務時間を過ぎた頃に
私は対異特務小隊屯所内の隊長室でひとり
ある書類を眺めていた
今日、信用できる知り合いの情報屋から受け取った
以前より頼んであったもの
彼女についての調書
なんと彼女は薄刃家で育った訳ではなく
よりにもよって斎森家で育てられていた
彼女は斎森家で虐げられ使用人同然に扱わられていたのだ
あの痩せこけた身体も
ぼろぼろの古着も
笑うことさえ満足にできないのも
全部、彼女の育った環境に原因があったのだ
斎森家もそうだが薄刃家も薄刃家だ
母の時で懲りたと思っていたが
彼女には異能がない
見鬼の才さえも
ゆえにおそらく、彼女は私との結婚は
成り立たないと考えているはずだ
それで過剰に遠慮がちになる
いずれは出ていくつもりなのだろう
しかし私にとっては
もはや異能の有無などどうでもいい
今までの縁談の相手とて
すべてが異能者だったわけではない
裕福な商家の娘やら、政治家の娘やらとも
縁談があった
私に縁談を持ってくるのは先代の先代──
つまりは祖父なので
結婚相手が異能を持つ娘でなければ許されない
ということもない
何より大切なのは、ただそこにいてくれること
地位や財産目当てではなく
ただ妻としてあの家にいてくれる女性を
私は望んでいる
彼女はそれを叶えてくれる
だから手放すことは考えていない
そして気になることはまだある
彼女は薄刃家───
以前、両親に聞いたことがある
久堂家、斎森家に比べ薄刃家の異能は比ではない
飛び抜けて異質で、危険なのだ
かの家の受け継ぐ異能は
ことごとく人の心に干渉する
人の記憶を操作したり
夢に入り込んだり
思想を読んだりするのはまだ危険度の低いほうだ
中には相手の自我を消し傀儡を作り出したり
幻覚を見せて錯乱させたり能力もあった
薄刃家は自分たちの異能の危険さを
十分に理解しているのに何故……
使い方によってはどんな攻撃的な異能よりも
国にとって害になりうると
ゆえに、いつからかはわからないが
彼らは決して表舞台に立たず
ひっそりと隠れて暮らしている
独特のしきたりによって自分たちの行動を縛り
異能の情報が盛れることを警戒し
滅多にその血を外に出さない
絶対に誰かに利用されることのないよう
場合によっては帝からの命でさえ
退けることもあるという
母方の祖母……薄刃澄美という女性が
斎森家に嫁いだというのは極めて例外的で
珍しいことといえる
そのあたりの事情は気になるところだ
思わずため息がこぼれる
正直、彼女が嫁いでくるにあたって
私に何も損は無い
むしろこれい女医に泣く望ましい
書類を放り出し独り言ちたが
妙案は浮かばなかった














編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。