【 北斗 視点 】
優吾との出会いは一年半くらい前。
俺が非常勤講師として担当している講義を優吾が選択していたんだ。
最初は全然優吾の存在なんて気にしていなかったけれど、ある日気が付いてしまった。
(あの子、黒板じゃなくて俺の事ばかり見てるよな?)って。
それからは優吾の事が常に気になって仕方がなかった。
優吾はとても良く笑う子で周りの友だちと楽しそうにしている姿をたびたび見かけた。その姿に人知れず自分も癒されていた。
私には本業があり、講義がある時だけ大学に来ていたが、いつの間にかその度に優吾の姿を探すようになっていた。
事態が変わったのはゼミの飲み会の時だった。
その日、飲み過ぎて動けなくなっていた優吾を俺が送っていく事になり、彼の自宅がわからなかったので自分のマンションに連れて帰る事にした。
目の前で横たわる君を見て思う。
私の持つ本業の仕事柄、カウンセリングで悩みを持つ人達に接する機会が多く、俗にいうゲイという方たちの話を聞くことも少なからずあった。優吾は俺に好意を持っているのでゲイなのではないか?彼らという人種を知るのに参考になるのではないか?という興味から手を出してしまったのだ。今になって思えばとても酷い事をしたと思う。
でも、人を知るためというのは言い訳だったのかもしれない。たぶん俺が知りたかったのは優吾自身だから、、、。
実際初めて優吾を抱いて、彼の魅力を知って俺は骨抜きにされてしまったのだ。
初々しい反応に俺は喜び、俺に愛されて感じる優吾がとても可愛いと思った。そして、禁断の果実を貪り食うように優吾を味わった。甘美な味わい、、、それを知ってしまったから絶対に彼を手放したくないと思った。
しかし、優吾と肌を合わせてから一年と少し経った頃、この関係に終わりを告げる足音が聞こえてきた。
3年ほど付き合った恋人が統合失調症になったのだ。女の勘というものだろうか。優吾との関係は知られてはいないのだろうが、俺の心が優吾に傾いている事を感じ取っていたのかもしれない。急に結婚を急かしてきたのもそのせいだろう。
恋人と別れ、優吾と歩んでいくという選択肢もあったが、自分のせいで病んでしまった彼女を捨てきれないという気持ちもあった。世間体というものに足を引っ張られた気もする。
結局彼女に押しきられて結婚することになった。結婚という事実を隠して優吾と関係を続けていけないのか?ということも考えたが、ウワサ好きの女子たちが集う大学で、それは現実的ではないと悟った。
優吾にも別れを告げなければならないと思い先日あったゼミの飲み会終わりにけじめをつけるつもりだったのだが、突然現れた長身の彼に優吾を連れ去られてしまった。一瞬呆気に取られたが、本気で優吾を心配する気持ちをひしひしと感じて、私が優吾の前を去っても長身の彼が優吾の側に居るならば安心だろうと安堵した。
ずるい大人でごめん、、、。
私は今日、優吾に別れを告げる。
そう覚悟したのだから。
→続く。











編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!