気がつくと、隣から電子音が聞こえてきた。
目を開けたけれど、辺りには人がいる気配すらない。
真っ白い天井しか見えない。
達也くんは?たいたいは?晴くんは?
もしかして、もう東京に帰ったのかな?
1人は、寂しいよ。
こんこん。
!
………なんか深みのある言い方だなぁ。
まぁ、3人一緒なら良いや。
また、会えた。
2人は、窓側のテレビ台の前まで来る。
まぁ、かなり久しぶりの酸素マスクで喋りにくいし
ありがたいです。
がらがら。
あ。 湿った声してる…。
凄い心配させちゃったなぁ。
晴くんがカーテンの内側に入ってきた。
あー、泣いちゃった。
でも、晴くんは泣いてる上にすごい笑顔でいる。
こんなに泣いてるのに綺麗な顔してるこ、
そうそういないよ。
顔を近づけ晴くんの頬に手を当てて
その涙を拭った。
右側の手は晴くんの頬、左手には達也くんの手が握られてて左腕はたいたいの手がある。
その現実に、とても嬉しいという感情と
自分の体が弱くなったなぁと感じる。
それでも、今はここにいないけれど
学校でできた同士たちも
僕の親友であることに変わりない。
この現実が、やっぱり嬉しいことには違いない。
…………それでも。
あ、久しぶりのばりばり岐阜弁でた。
じゃなくて
こんこん。
ちょっと疲れてきたから達也くんに丸投げ。
……………ごめんめんどくさいだけ。
多分、分かってくれてると思うんだけど。
右から晴くん、達也くん、たいたい。
僕は生まれて初めて『生きてきてよかった』
そう、急に思った。
今までは『死にたい。生まれてこなきゃよかった』なんてずっと思っていた自分を蹴り倒したいくらい。
黒歴史ってやつかな。
…まぁ、黒歴史ないって人はいないよね。
完璧な人なんていない。
黒歴史は誰にでもある。
確かに、あの人は刃物持ってると思うし、
僕とお姉ちゃんがいたらここにすぐ来ると思うし。
ちょっと痛い表現だけれど、
最終決戦。
予定よりも早かったけどね。
たいたいはお姉ちゃんを窓側に呼んだ。
するとすぐにドアが開く音。
………きた。
やっぱり。
こう来ると思った。
……これからもっとキレるな。
晴くん……。
綺麗な瞳から、ボタボタと溢れ出る涙。
それをさっきみたいに拭ってあげたいけれど、
今は無理だ。
やっぱり。
怒ると思った。
ここで、刃物を出す。
絶対、晴くんを刺そうとする。
この部屋の誰かが傷つくなんて
そんなの、絶対に嫌。
思わず晴くんの腕を引いた。
また僕の考えが当たったみたいで
ナイフを出して晴くんを刺そうとしていた。
でも、僕が腕を引いたからそこにいるはずの晴くんがいなくてバランスを崩した。
そいつが持っているナイフは、
意外にすんなりと僕の心臓近くに
刺さった。
意外に、痛いんだなぁ。
息も、吸いにくい。
いつも、包丁で
死なないかなぁって思ってたのに。
いつか死のうって、思ってたのに。
ほんとに今は、死にたくないな。
学校の友人たちも、ノンラビも
僕の事心配してくれる人が
たくさん居るのに。
こんなクズに殺されるなんて、
あんまりだよなぁ。
だんだん、周りの声も
聞こえなくなってきた。
ねぇちゃん、なんて言ってるの?
達也くんもなんて叫んでるの?
晴くん、なんで泣いてるの?
泣かないで?
僕が死んでも、僕はみんなの守護霊になって
あいつから守ってくから
安心してよ。
晴くんが叫び、丁度警備員や
医師、看護師が入ってきた時
部屋に響く音が
長い音に変わり、
僕の目にはまだ暖かい涙が流れた。
〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜
あの事件から1年が経った。
本当に、壮絶だったな。
達也くんと、大我と理由は忘れたけど
一般の家庭に泊まることになって。
最初は美人のお姉さんと笑顔が可愛くて似合ってた妹がいて。
……でも、その姉妹には
毒親がいて、すごい生きづらそうだった。
一緒に過ごしていくにつれて、話もよくするようになって。
その流れで曲を作ることにした。
姉妹の話を聞いて、俺と達也くんで作詞作曲して、
大我が動画作って。
姉妹には作ってるとこ見せなかったけど、
ちゃんと作ってたんだよ。
………でも、それを作り終わる前に
あの事件が起きて。
妹ちゃん、半年ちょっとくらい寝たきりだった。
…………あの事件が起きる前に、
新曲聞かせてあげたかったな。
俺の想いも、のせたあの曲を。
俺は、本当はあなたちゃんのことが好き。
横で見てても飽きないくらい
ずっと笑ってる時もあれば、
とても辛い時は自分を隠して辛そうな
笑みを浮かべてる時もある。
自分のことは後回しで、
周りを楽しませる子。
……本当は好きなんだよ。
だけど、あなたちゃんは多分
好きな人を作らない。
………や、違うな。
『作れない』んだ。
自分が、あんな人と同じようになったらって
思っちゃうんだよね。
もう、好きな人作るってこと怖くなっちゃったんだ。
あなたちゃんの心臓が止まった時、本当は言ってた。
『好きだ、置いてくな』って。
でも、もうあなたちゃんの思ってることも分かってたから起きた時、
『おはよう』だけ言った。
………本当は、辛い。
けれど、あなたちゃんの方が絶対
辛かった。
それを考えると、これからのあなたちゃんのことを先輩として、友人として
性別関係なく、携わっていく。
何回だって転んで
何回だって走って
何百回とやったって
明日だけを信じて。
それでいい、
それだけでいい。
羽を生やせ
進め。
これからも、よろしく。
あなたちゃん。
……神賀美凌莵くん。
Fine.
〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜
長らくお待たせしてすみません!
やっっと終わりました!
何ヶ月くらい空いてしまったのかな?
ごめんなさい、数えてなかった…。
(※ちなみに僕、元合唱部であんスタが
好きなので終わり方Fineにしました笑)
最後主人公の名前、りょうとという名前がありますが、
主人公、名前を変えたってこと、伝わりましたかね笑
それに読み直したらすごい変な書き方してたので手直ししましたw
(すごい間違えてたよw)
実は一曲くらい僕が書き下ろしたかったのですが、やっぱりノンラビの皆さんの世界観が壊れてしまうな、と思いまして。
そしてもうひとつ実は。
長らく空いてしまった言い訳をお聞きしていただきたく。
いつもテスト期間でも、バイト中でもこの作品を書いていたのですが、今月の7日(6月7日)
からテスト前期間でバイトも休みを入れて
作品も書き下ろそうとしたのですが、
今月の18日。
僕のTwitterにもインスタにもあげていたのですが、
学校は登校中。
人が自らの手で命をたった現場を通りかかりました。
いつもの登校する道であまり人気がなかったのもあり、僕といつも一緒に行っている友人と通りました。
初めは状況を理解しておらず、いつも見かける後輩組も呼び、一緒に各方面へ連絡などをしてその場を適切に処理しました。
ですが、徐々に状況を理解し
その後から何事にも集中することができなくなってしまい、さらに目撃した全てを思い出してしまうようになり
今現在、精神的に辛い状況となってしまいました。
なので、これから新作は出していくと思いますが、かなり時間がかかってしまうと思います。
ですが、小説を、物語を作っていくことは今でも大好きなので
そんな僕を応援していただけると嬉しいです。
これからも書き続けていきますので
よろしくお願いします!!
それでは!
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。