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第3話

Chapter2
115
2026/03/04 09:56 更新
将校
将校
明日は非番だったな。何か予定はあるのか?

歩きながら、前を向いたまま彼は尋ねた。その問いかけは、単なる上官としての確認というより、個人的な興味からくるもののように聞こえた。
参謀
参謀
…いや、特には無かったと思うよ。
「特には無かったと思う」という、少し考え込むような類の返答に、司は歩みを止めずに耳を傾けていた。二人の足音だけが静かな廊に響く。

将校
将校
…そうか。なら、久しぶりに街へ出てみないか?
彼は提案する。その声音は淡々としているが、内容には明確な誘いの意図が含まれていた。
将校
将校
最近、新しい店がいくつか出来たらしい。…、偶には、息抜きすることも大切だろう。
参謀
参謀
…、街かい?
参謀
参謀
…あぁ、分かったよ。
了承の返事を得て、司はわずかに口角を上げた。闇の中では誰にも気づかれないほどの些細な変化だったが、それは紛れもない笑みの兆候だった。
将校
将校
よし、決まりだな。朝、迎えに行く。時間は…そうだな、昼過ぎくらいでいいか?ゆっくり寝ていろ。
彼の声には、計画がまとまったことへの満足感がかすかに含まれている。まるで子供が遠足を心待ちにするような、そんな純粋な高揚感。



話しているうちに、あっという間に類の自室の前に着いた。
将校
将校
ここまでで大丈夫か?
その声音はいつものように平坦だが、珊瑚色の双眸はまっすぐに類の顔を見つめている。夜闇の中で、その眼差しは静かながらも強い光を放っていた。
参謀
参謀
あぁ、充分さ。…、態々有難う。
将校
将校
礼には及ばん。
彼はそう言うと、持っていたランプの持ち手を類の手へと移した。指先が触れ合い、互いの体温が微かに伝わる。司はすぐに手を離すと、一歩下がり、壁に背を預けるようにして立った。
将校
将校
何かあればすぐに呼べ。隣の区画にいる。

それは建前だった。本当は、このまま類が部屋に入り、扉が閉まるのを見届けるまで、ここを動くつもりはないのだろう。その佇まいは、まるで主君を守る忠実な騎士のようでもあった。
将校
将校
今夜は冷えると聞いた暖かくして休め。…では、また明日。
最後の「また明日」という言葉は、明日の約束を強調するように、いつもより少しだけはっきりと響いた。
参謀
参謀
…あぁ。……、また、明日。
類が部屋の中へ消え、扉が閉まるかすかな音を聞き届けると、司はしばらくその場に留まっていた。やがて中の明かりが漏れなくなったことを確認し、ようやく彼は踵を返す。自室へと続く短い廊下を歩きながら、先ほどのやり取りを反芻していた。街へ行く約束。ただそれだけのことが、彼の胸を微かに温かくしていた。

ortensia
スクロールお疲れ様です。
ortensia
今回は、少し文字数が前回より少なかったですね。すみません。
ortensia
次回は司と類が街に出掛ける様ですね。
ortensia
では、…次のショーでも、会える事を願っています。

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