「はぁ、みんなすぐ僕を利用しようとするんだよね。仕事をネタにして誘ってきたり。それって脅迫に近いと思わない?」
冗談めいて笑うユウ。それに対して私も、
「そうだね」
と言って苦笑した。
「僕は杏奈以外興味ないのにさ。あ、それよりさ、今度美味しいカフェ見つけたんだ。杏奈ぜったいに気にいると思うんだ」
「え、本当に? 行く行く。ユウって、色んな場所知ってるよね。すごいな」
「だって、杏奈に喜んでもらいたいからさ」
ニコニコと笑うユウ。平然とそんなことを言ってくれるから嬉しい。
「ありがとう」
「恋人なんだから当然じゃない。それに杏奈は僕を利用しようとしないし」
彼は私を信じてくれている。
「うん」
それに対して、私は笑顔を貼り付ける。けれど、心中は罪悪感でいっぱいだった。だって違うから。
ほんとは私もおなじ。ユウを利用していたのはほかでもない。私だったから。欲にまみれた哀れな自分。どんな咎めも受ける。だから、ユウを私に返してーー。
…………ユウ……。逢いたいよ。どこにいるの? 眠れないよ。無事なの?
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。