廃墟となったビルの屋上に、二人の少女が向かい合っていた。夜明け前の淡い青が、空を包む。風が吹くたび、黒と白の力が激しくぶつかり合った。
玲奈の手から放たれる冷気が、瞬く間に床を凍られせていく。その冷気はただの氷ではない。触れたものの音を奪う、無音の氷壁。
その挑発に、いろはは口元を歪める。背負ったケースを開き、中から黒いギターを取り出す。
ギターをかき鳴らす。響く音が、衝撃波となって氷壁を砕き散らす。だが、玲奈は一歩も動かず、ただ氷の翼を広げた。
攻撃が激化する。音が氷を裂き、氷が音を封じる。その戦いはまるで、舞台で繰り広げられる二重奏だった。
一方その頃、少し離れたビルの上。星野灯莉は、戦いを俯瞰していた。
かつて共に笑った仲間の姿。その背中は、変わらず強く、まっすぐて。灯莉の胸の奥に、痛みが走る。
その心の隙間を、背後からの声が突く。
背後に現れたのは、闇の花を纏う少女、九条咲夜。彼女は灯莉の肩に手を置き、甘く囁いた。
灯莉は反射的にその手を振り払う。
言葉は力強い。けれど、胸の奥に生まれた迷いを、完全に消すことはできなかった。
いろはと玲奈の戦いは、限界に近づいていた。
いろはの目が、一瞬揺れる。その隙を、玲奈は見逃さない。氷の刃が振り下ろされ……
紅蓮の炎が氷を弾き飛ばした。駆けつけたのは星野燈。姉の怒りと悲しみが、炎となって夜を染める。
燈の炎と玲奈の氷。両者の力が激突する瞬間、灯莉の心臓は大きく跳ねた。
戦いの中、姉の姿に迷いを映す灯莉。彼女の心は、確かに揺れていた。

















編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。