第4話

第四話 黒き旋律、白き氷壁
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2025/09/07 06:25 更新
廃墟となったビルの屋上に、二人の少女が向かい合っていた。夜明け前の淡い青が、空を包む。風が吹くたび、黒と白の力が激しくぶつかり合った。
黒神いろは
黒神いろは
玲奈……あんたはどうして、あの子を選ばせたの?
白井玲奈
白井玲奈
勘違いしないで。あたしは灯莉に選ばせたんじゃない。導いただけ。
玲奈の手から放たれる冷気が、瞬く間に床を凍られせていく。その冷気はただの氷ではない。触れたものの音を奪う、無音の氷壁。
黒神いろは
黒神いろは
音を……封じる気?
白井玲奈
白井玲奈
そうよ。あなたの音波の力を封じればただの小娘。舞台に立てない演者なんて、価値がないでしょ?
その挑発に、いろはは口元を歪める。背負ったケースを開き、中から黒いギターを取り出す。
黒神いろは
黒神いろは
残念。私はステージを選ばない。どんな場所でも音を響かせる。それが……黒神いろはのやり方よ。
ギターをかき鳴らす。響く音が、衝撃波となって氷壁を砕き散らす。だが、玲奈は一歩も動かず、ただ氷の翼を広げた。
白井玲奈
白井玲奈
氷は砕けても、また凍りつく……あなたが諦めるまでね。
黒神いろは
黒神いろは
諦めるのはあんたのほうだ!
攻撃が激化する。音が氷を裂き、氷が音を封じる。その戦いはまるで、舞台で繰り広げられる二重奏だった。
一方その頃、少し離れたビルの上。星野灯莉は、戦いを俯瞰していた。
星野灯莉
星野灯莉
………いろはさん。
かつて共に笑った仲間の姿。その背中は、変わらず強く、まっすぐて。灯莉の胸の奥に、痛みが走る。
星野灯莉
星野灯莉
ダメだな……私。迷ってる場合じゃないのに。
その心の隙間を、背後からの声が突く。
九条咲夜
九条咲夜
ねぇ灯莉ちゃん。ホントはお姉ちゃんのそばに戻りたいんじゃない?
背後に現れたのは、闇の花を纏う少女、九条咲夜。彼女は灯莉の肩に手を置き、甘く囁いた。
九条咲夜
九条咲夜
無理に強がらなくてもいいのよ。あなたの心の奥はぜ~んぶ見えてるんだから。
灯莉は反射的にその手を振り払う。
星野灯莉
星野灯莉
……私は戻らない。お姉ちゃんを倒すって決めた。それが私の正義だから!
言葉は力強い。けれど、胸の奥に生まれた迷いを、完全に消すことはできなかった。
いろはと玲奈の戦いは、限界に近づいていた。
黒神いろは
黒神いろは
はぁ……っ!まだ……倒せないの?!
白井玲奈
白井玲奈
倒せないんじゃない。倒させないの。だってあなたには……仲間を殺す覚悟なんて、ないもの。
いろはの目が、一瞬揺れる。その隙を、玲奈は見逃さない。氷の刃が振り下ろされ……
星野燈
星野燈
いろはっ!!
紅蓮の炎が氷を弾き飛ばした。駆けつけたのは星野燈。姉の怒りと悲しみが、炎となって夜を染める。
星野燈
星野燈
妹を利用して……絶対に許さない!
白井玲奈
白井玲奈
利用?違うわよ。彼女は自分の意志で選んだの………それが一番残酷でしょ?
燈の炎と玲奈の氷。両者の力が激突する瞬間、灯莉の心臓は大きく跳ねた。
星野灯莉
星野灯莉
(お姉ちゃん…………どうしてそんな顔するの……?)
戦いの中、姉の姿に迷いを映す灯莉。彼女の心は、確かに揺れていた。

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