第3話

第三話
4
2025/07/28 10:36 更新
かつて教室だった場所。今は瓦礫と沈黙に支配された廃墟の中で、一人の少女が佇んでいる。
星野灯莉
星野灯莉
ここ……昔、お姉ちゃんと通ってた学校だった。
灯莉あかりはぼそりとそう言う。足元には、ひび割れた机と焦げた黒板。懐かしさと、どうしょうもない違和感が胸を締めつける。
白井玲奈
白井玲奈
感傷に浸ってる暇はないでしょ灯莉。
ふわりと現れたのはコードネームフロスト・ヴェイルこと白井玲奈。敵側のリーダー格であり、灯莉にこの闇の陣営へ誘った張本人だ。
白井玲奈
白井玲奈
あなたが選んだんでしょ?大義のない正義ごっこを終わらせるって。
玲奈は冷たくそう言った。
星野灯莉
星野灯莉
選んだわ…………だから、私はもう戻らない。私が滅ぼすべきは、姉そのものその存在なの。
灯莉は迷いのない目でそう言った。玲奈は薄く笑い、窓から外を見下ろす。遠くに灯る、かつての仲間たちの炎。
白井玲奈
白井玲奈
へえ。あれほどあなたを守ってくれた姉を滅ぼす理由が、それだけ?
玲奈は皮肉っぽくそう言った。灯莉の手が、無意識に制服の胸元を握りしめる。
星野灯莉
星野灯莉
守られるって、あんなに苦しいものなんだって…………お姉ちゃんは知らないんだよ。
その時、遠くから聞こえる振動。空が揺れ、空間が歪み、誰かの転移が近づいてくる。
白井玲奈
白井玲奈
来るわね。あの子……黒神くろかみいろは。
玲奈が軽く手を上げると、闇から生まれた黒い獣たちが姿を現す。全ては陽動、時間稼ぎ。
白井玲奈
白井玲奈
灯莉、忘れないで。あなたは鍵よ。あの世界を開くための、ね。
灯莉は、黙って目を閉じた。玲奈が言う世界が何を目指すのか灯莉自身もまだ知らない。
一方、陽動に気づいた紅葉もみじたちは、分散していた。
黒神いろは
黒神いろは
こっちは任せて…………でもね、紅葉。
通信越しにいろはがそう言うが一瞬通信が乱れた。
黒神いろは
黒神いろは
灯莉の力、ちょっと普通じゃないわ。彼女、たぶん……誰かに力を与えられてる。自分のものじゃない。
その言葉に、紅葉は息をのむ。
朝霧紅葉
朝霧紅葉
じゃあ、誰が……?
その瞬間いろはの前に現れたのは白井玲奈だった。
白井玲奈
白井玲奈
正解。あたしよ。でも操ってるわけじゃないの。灯莉はね、自分の意思で堕ちたのよ。
笑いながら玲奈はそう言った。
黒神いろは
黒神いろは
そう……なら、私はあの子を殴ってでも連れ戻す。正義が違っても、私たちは友達だったから。
玲奈の笑みが、微かに歪む。だが次の瞬間、闇がうねり、二人の激突が始まる。
星野灯莉
星野灯莉
お姉ちゃん、次はちゃんと殺しに来てね。じゃないと…………こっちも本気を出せないんだから。
空に向かって灯莉はそう言った。朝焼けが、灯莉の背中を淡く照らす。光と影、その両方を背負って戦う灯莉は、笑っていた。

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