その後、解散した皆は配布された教材を持って帰路に着く。
ベリアンとムーが馬車で迎えに来てくれた。
一緒に遊ぶことに必死になっていたクララの顔を思い出すと、どうしても食べる気にはなれなかった。
けど、だからといって捨ててしまう訳にもいかない。
それから数日、中庭でクララと遊ぶ日が続いた。
その都度、彼女は帰り際にお菓子とジュースを渡してきた。
クララの必死なあの姿がずっと頭から離れない。
このままじゃ駄目だってことは分かっているのに、
あなたのお名前は勇気を出してボスキにクララのことを相談した。
毎回お菓子をくれること、それが一緒に遊ぶ為だということ。そして、そんなことしなくても自分は一緒に遊びたいと思っていること。対等に、友達になりたいという純粋な気持ちであることを。
ボスキの言葉を聞いてやっと気付いた。
伝えないと。友達なんだから。
その日、あなたのお名前はクララから貰ったものに手をつけなかった。
そして翌日。
それらを持って、今日は入間と一緒に登校しようとサリバン邸にやって来た。
ボスキに背中を押されたあなたのお名前は、馬車の中で入間に打ち明ける。"似た者同士"な入間なら同じことを考えているかもしれない、と思ったからだ。
予想通り、入間もあなたのお名前のように、昨日クララから貰ったジュースを手に持ってきていた。
2人はいつものように、中庭でクララを待つ。
来た。
クララは2人の気持ちを悟っているのか、何度も話を遮る。そしてたくさんお菓子やジュースを手に乗せた。
堪えきれず、ほぼ同時に言い放った。
全てを伝えきる前に、クララは大粒の涙を流して、子供のように泣きじゃくった。
クララ……
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。