その後、他愛もない会話をしていると、サリバンたちの話し合いが終わって、入間たちは帰っていった。
あなたのお名前は、早速サリバンからの入学祝いを開けてみる。
刺繍入りのハンカチにローブ、魔導書なんかが丁寧にラッピングされ、たくさん贈られてきていた。
一つ一つ丁寧に開けていき、クローゼットや本棚に仕舞っていく。
そうして翌日、あなたのお名前は学校生活に対する希望に満ちた気持ちで朝を迎えることができたのだった。
今日は使い魔召喚の2日目。
使い魔召喚は、2つのグループに分けられ、2日間に渡って行われる。
使い魔の召喚は位階の決定に大きく関わるものだが、あなたのお名前はそんなこと気にもとめず、どんな魔獣が来てくれるのか、それをとても楽しみにしていた。
そんな考え事をしながら儀式開始を待っていると、聞き覚えのある声が聞こえた。
あのニット帽の生徒だ。
それから間もなくして、モモノキ先生の合図によって召喚の儀が始まる。
先生が説明している途中、こんな噂話が聞こえた。
なんでも、特待生イルマがカルエゴ先生を使い魔にしてしまったとか…
気にはとまったが、いつの間にかあなたのお名前の順番が回ってきてしまった。
羊皮紙を受け取り、ニット帽の生徒と入れ替わるように魔方陣へと歩み出る。
注目を集める。
それもそのはず、Devil's Palaceは位階も授かっていない主君に仕える、あの13冠でも呆れるほど変わっている悪魔たちの集まりなのだから。
まして、今まで謎に包まれていた主が突然姿を現したとなれば…
期待が高まる中、あなたのお名前は全く違うことを考える。
皆の空気に呑まれまい、という無意識下の抵抗だった。
血で羊皮紙に円を書き、深呼吸をして蝋燭の火にかざす。
途端に炎が膨れ上がり、身を包む程の煙に覆われた。
自らの期待と興奮の最中、煙はゆっくりと晴れていく。
姿を現したのは、紅蓮色の頑丈な鱗を身に纏った、小さな竜だった。胴体や尾は蛇のようにしなやかで、強靭な翼を持っている。
赤い竜はあなたのお名前の周りを一周すると、その肩に足を停めた。
と、再び歓声が上がる。
彼は喉を鳴らす。
あなたのお名前の声に応えたんだ。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。