第9話

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2025/01/05 15:00 更新
田中side











































後部座席のシートを倒し

慎太郎があなたの下の名前をそこに寝かせる。






意識が途絶えてもなお

お腹から出てくる血は止まることを知らず

あなたの下の名前の下に敷いてあるタオルを赤く染めていく。






松村「誰かタオル持ってない?!なるべく長いの!」






いつもはうるさい車内も

今は北斗の切迫した声だけが響く。







髙地「大我、そっちの横にタオルない?」







高地が運転しながら助手席に座るきょもに問いかける。







京本「ある!はい、樹」




助手席から身を乗り出しタオルを俺になげる。






松村「さんきゅ、」





俺からタオルを受け取った北斗は

器用にあなたの下の名前の体に

タオルを巻き付ける。






松村「ちょっと彼女の体浮かせてくれる?」





言われた通りに彼女の背中を支え浮かせる。






松村「とりあえず今はこれで大丈夫」







背中から手を離し

そっと座席に寝かせる。





よりによって俺に力仕事頼むのかよ、

とか思ってたけど

そんなことも杞憂に終わるくらいに

あなたの下の名前の体は軽かった。







松村「止血はしたけど家ついたら傷縫わなきゃダメそう」

髙地「北斗できる?病院の方がいい?」

松村「出来ると思うから家になるべく急いで。
   この子を仲間にしたいんだったら」






そう言うと同時に

北斗が背もたれにドサッともたれ掛かる。





その瞬間、車内が安堵に包まれる。







ジェシー「この子まだ生きてる?」





緊張が溶けたからか

後ろから顔を出しジェシーが心配そうに質問する。





元敵組織の人をこんなに心配できるジェシーは

殺し屋に向いてないんじゃないかと思うほど

お人好しだ。




こんな人が裏社会で沢山の人を殺しているんだから

人間何があるか分からないと心の底から思う。






松村「うん」





そう言いながら血まみれの手で

あなたの下の名前の首に手を当て脈を確認する。









松村「脈は弱いけどまだある、大丈夫だよ」







あなたの下の名前の首から手を離し

前に向き直る北斗。







田中「あなたの下の名前の首見てみ?
   お前のせいで血だらけだよ」


松村「え、まって、ごめん、!」







急いで確認するなりアワアワしだす北斗に

後ろに座っている慎太郎とジェシーが

たちまち笑い出す。





森本「北斗がこんなに焦ってんの初めて見たわ!」

ジェシー「北ちゃん可愛い〜」






馬鹿にする2人を尻目に

車に積んであるウェットティッシュを取り出し

北斗に渡す。





もう1枚取り出し

あなたの下の名前の首を拭こうと横を向くと

北斗が自分の血塗れの手には目もくれず

まるでガラス細工を扱うかのように

丁寧にあなたの下の名前の首に着いた血を拭いていた。





田中「お前そんな優しかったっけ?ましてや女に」





うるせえな、と北斗は笑いながら続ける。





松村「俺にも人の心はあるのよ」








北斗が自分の手も拭き終わったと同時に

キーっと音を立てて車が勢いよく停車する。




髙地「ついたよ!」





髙地のその声をスタートに

俺らの空気はまた切迫したものに変わった。









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