僕の背中を擦りながら咲斗が尋ねる
「......め、ね」
何か声が聞こえた
「ごめんね、無理させちゃって」
今度はハッキリ聞こえた
それと同時に白い火の玉が目の前にポッっと現れた
「驚かせてすまないね」
直接脳内に響くような声、先程聞こえたのと同じ
「本当はそっちの男の子の方に乗り移ろうとしたんだけど間違えて君の方に行っちゃってね」
「元々霊感が強い訳でも無かったみたいだし、少し前気を失って倒れてたみたいだから耐性が弱かったみたい」
「そこに俺が入ったから気分が悪くなってしまったんだよ」
急にものすごく話すものだから頭が理解してくれない
「俺は日野陽介、この学校の卒業生だよ」
「まぁ、それも何十年と前の話だけど」
「うん、そういう事だよ」
「俺、急がないと行けないんだ」
「そう、“彼女”が待ってるから」
「もしかしたら君のお友達も...」
「いや、何でもない」
「うん、大丈夫だよ」
「優しいね、ありがとう」
スウっと白い火の玉が咲斗の体へ入っていく
ガシャーンッ!
ダッ
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編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。