じっ…くりと日記を読んでいたら、ミンジュ…の声で現在へと意識を引き戻される。
にこにこしながら答えてるけど、いや、そうじゃなくて。
ご飯。
デンジャンチゲ。
と、おかずが少々。
ずらっとテーブルの上に並べられる。
きっと、毎回同じようなやり取りなのだろうな。
これから始まる1日も、彼女にとってはループしているようなもの。それを毎日しても、私だけが初見になる。
なんて迷惑な奴だ。結局は私が生きているだけで彼女を困らせているのではないのか。
にこっ、と微笑んでみせた彼女。
悠長に答えてみせた彼女。
どこか、自信満々に答えてみせた、彼女。
やめろ、やめてくれ。
君には幸せでいてほしいんだ。
“私”にとっては初対面なはずなのに、何故かそう思った。
嗚呼、今までの会話も、この会話も、毎日繰り返しているんだろうな。
それをまた今日だけでない過去の私も、いままでずっとそう感じる毎日。
その答えも、今まで数え切れないほど口にしたのだろう。
嫌な顔ひとつせず質問に答える女。
それを眺めながら、怒りというか、悲しみというか、とても複雑な感情が私の心臓を灼く。
誕生日。ケーキ。
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2023年8月1日
きっと、私と彼女はこの先ずっと、2人だけで生きていくのだ。
そう、ふたりきりの地獄。
私にとっては、天国のような地獄である。
…
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。