第5話

1-3 天使の護り方
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2025/11/23 12:27 更新
Mmntmr
んう……

天井から吊り下げられたシャンデリアの明かりで目が覚めた。背中の感触と視線の高さで、自分がベッドに寝かされているんだと分かる。
Mmntmr
rirは……?
__
え、あれ!目覚ましてる!

突然の声にびっくりして体を起こした。ライム、イエロー、ピンク。きれいなグラデーションの髪と星の髪飾り。ふわふわの髪の毛とぱっちりおめめの天使。
__
rirさん、師匠さん起きたよ!
rir
ほんと!?ほんとだ!
rir
師匠、あの光景を見てから倒れちゃって小一時間眠ってたんですよ!

あの光景──天使が人を殺め笑っていたあの光景。フィクションだと思っていたものが実在し、神聖で純白と信じていたものの手が汚れている。確かに昏倒もする。
Mmntmr
ちなみにそちらの方は?
__
私?かな?
tyk
tykです!師匠さんのことはたびたび聞かされております
rir
彼女も天使だけど、私と同じで人を殺さず隠れて暮らしてるんです

裏切り者仲間と言いながら肩を組むrirに、少しはにかんで見せながら言う。
tyk
師匠さんは、rirさんから天国の常識とか聞かされてここに来たの?
Mmntmr
天国の常識?
tyk
え、rirさんわたすたちのこと何にも教えてないの!

あれ何も説明されてないのかとでも言いたげな、困った目線を飛ばしている。目上の人の話がつまらない時、上手く愛想笑いができないタイプだな、となんとなく思った。
tyk
えーと、人は死ぬとたまーに天使に生まれ変わるんですが、そのときに生前の記憶を失くすらしいんですよね、普通は
tyk
だから天使たちは『救済=死!』みたいなあり得ないルールも受け入れられる……らしいけど
Mmntmr
けど?
rir
なぜか私たちは記憶を持ったままなんです

さっきの天使2人の姿が思い浮かんだ。記憶を失くして命を奪い、それを正義の「救済」とする……羽と金の輪以外は完全に人と同じ容姿だっただけに、余計に得体のしれない感じがした。
rir
他とは違って道徳心もあるから、いつまで経っても『救済リスト』にチェックが付かなかった。ただの1つも
rir
その罰で捕まりかけて死に物狂いで逃げて……それでここに来たんです
Mmntmr
……そもそもなんで天使は人を救いたがるんですか?本当の目的が隠れてそうですけど

かねての疑問。
rir
それは私にも分からないんです……逃げ出したから、天使という組織の枠にすら入れませんし
tyk
陰謀とか隠してそうなのは神様とかだけど、顔すら見たことないよ
Mmntmr
そういうものなんですか?
tyk
平天使なんてそんなもんだよ……

その時、外からバサバサと激しく羽ばたく音と地面に降り立つ音がした。誰かが来たらしい。ドアが軋んで呻きながら乱入者を受け入れた。

天使の少女が2人。さっきの屋上のとは違う顔。
rir
mzrさんとgsoさん!
mzr
えっと……もしかしてrirさんがいつも話してる師匠さん!?はじめまして、mzrです!
gso
gsoです、角は気にしないでね

長い銀髪にイヤーマフラーをした少女と、桃色の髪の毛に黄色の角が生えた少女。前者は慌てふためいているけど、後者は冷静沈着でおっとりした顔をしている。
mzr
大変なんです!あの、救済リストを偶然拾っちゃって……!

長い銀髪にイヤーマフラーをした少女が、私の方にそのリストの紙面を差し出してくる。
mzr
さっき中身を見て気付いて、早く知らせなきゃって思って……
mzr
この名前、師匠さんの……mmさんの恋人ですよね?

名前、年齢、顔写真……それらがたくさん並んでいるリストの中に、見慣れた顔を見つける。

それは確かにiemnさんで……でもどうして彼が救済されなきゃいけないのか、どうしてこんなリストに入れられているのか全く分からない。

救済なんて名ばかりの殺害リストなのに。
Mmntmr
救済って……なんで
gso
いじめ、家庭内暴力、パワハラモラハラ……そういうものに苦しむ人を楽にするのが『救済』だよ
gso
リストに入るような理由があるんじゃないかな?
Mmntmr
iemnさんは……確かに昔は辛い時期もあったけど、最近は……!

思わずカッとなった私にrirが返す。
rir
さっき師匠が言った通り、殺すことに目的があるんでしょうね…… きっと、本人が今幸せかなんて関係ない
rir
それらしい過去があれば、天使も救済の必要性を疑わないでしょうし
Mmntmr
そんなことのために利用されていい過去じゃない……

複雑な感情が渦巻いた。私の恋人が何かに利用されようとしている。iemnさんの辛い過去もなんとか繋がっている命も、顔すら知らない天使のためにあるものじゃない。それなのに勝手にリスト入り?
Mmntmr
ふざけてる、こんなこと……!
rir
そうですよ、師匠
rir
こんなことおかしい……だから

不意に強い鼓動を感じた。私の心臓が激しく拍動している。体の内側から何かが溢れ出しそうだ。
違和感を口にしようとして気が付いた。周りの天使達が私に手をかざして──光を集めている?

やがてその光に耐えきれなくなった時、ふと風景が思い浮かんだ。そうだ、鳥の雛がはじめて翼を広げた時に感じるのは、達成じゃなくて期待だ。

今の自分なら奇跡すら起こせる、そんな期待。
gso
mmさんに羽が……!
tyk
光の輪っかも出てきたよ!

自分でも分かった。相当大きい翼が生えたのが、背中の重みから伝わってくる。

でも私は死んでいないから羽がなかったんじゃ。ということは今の私は──そんな疑問が浮かんだが、すぐに振り払った。
私の弟子が私を殺して天使にするなんてことあり得ない。
Mmntmr
私は天使になったんですね
rir
天使とは言い切れない存在ですがね
Mmntmr
言い切れないって?

gsoさんが噛み砕いて説明してくれる。
gso
普通の天使っていうのは、神様や大天使の手下みたいなものなんだよね
gso
……だから私たちは人間を守れない

そう聞いて、じゃあ誰が殺戮を止めるんだと思う。
天使は自分の行いに疑問を抱くことすらなく命を奪うのに、人間には自衛する手段がない。そもそも視認できないのだから。

ここで意味が分かった気がした。私は厳密には天の使いじゃなくて、かつ天使も悪魔も見える。
gso
天使や悪魔が見え、上からの支配を受けないイレギュラーな存在──それがあなたなんです
Mmntmr
私なら人を──iemnさんを守れるかもしれないってことですか

うんうんと頷く天使達。rirが天使を代表して言う。
rir
今、iemnさんが狙われているんです
rir
師匠は私たちと違って人を守れる……守護天使とでも呼びましょう
rir
師匠、"守護天使"として天使と悪魔から守ってくれませんか

私はすぐに頷いた。戦うことを誓った。iemnさんに伸びる魔の手を断ち切るために。
──
おー……

「裏切り者たち」の会話を聞いて、密かにため息を溢した。でもそれはマイナスなものではなかった。神の力を使わずに、人間に翼と光の輪を与える──それに対する感嘆のため息と言ったほうが近い。

彼女らは、自身が何度も口にしている「神様」が話を聞いているなんて、思いもしていないだろう。
──
すごいなあ……"守護天使"かあ

いつか、本気で計画を止めようとする彼女たちが、神の居場所を嗅ぎつけるかもしれない。特に「守護天使」と呼ばれる彼女──安定していた地位を脅かされる気がして、期待感で顔が上気する。

持たないはずの心臓が痛いほど高鳴った。
🪽tyk🪽
いつでもポジティブな天使。感情がすぐ表に出てしまう。妹がいるが、何か事情があるらしく人前では絶対に会わないんだとか。


🪽mzr🪽
おっちょこちょいで純粋な天使。混乱したり慌てたりしがちだけど優しい天使だと評判。


🪽gso🪽
賢く落ち着いている天使。分からないことがあるとすすんで教えてくれる。なぜか角が生えている。
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いまは天使やら救済やらのいろんな設定を、どんどん小出しにしていくスタイルで話を進めています。

私は書いている側なので話も設定ももち分かりますが、読んでいる側としてはいかがでしょう……?

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設定や話の展開について
わかる!
60%
まあまあわかる!
29%
あんまりわからない…
9%
全然わからない…!
3%
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解説
あったほうがいい
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なくてもいい
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アンケート次第で、あらすじに書くか必読チャプターを作るかして分かりやすくしようと思います

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