自覚した時にはもう遅かった。
1度自分の中で溢れ出した気持ちは、すぐに言の葉となって自分の口から紡がれていて、目の前の想い人は、口をへの字にして呆然としていた。
その言い方は、まるで。
私が好きになるのを望んでいたかのようで
ねえ、そんな言い方しないでよ。
私、自惚れちゃうよ?
ねえ、切島。
今度は私の番だった。
切島を信じられないわけじゃない。
だけど、この歳にもなってろくに恋愛などをして来なかったせいか。わたしは目の前に起こっている現実を消化することが出来なかった。
私が...切島が好き、そう言った。そして、切島もまた。私を...好きだと、そういったのだ。
そのあとはもう、どうやって帰ったのかも覚えてない。
ただ、なんだか夢見心地で。
切島にすきだ、と言われた余韻に酔っているのか、それとも少量を口にしたお酒のせいなのか。
頭がクラクラして、切島の目を見ることも出来なくて。
最後、切島がどんな顔をしていたか、どんな話をしたか、どんな風に別れたのかとか。何も、覚えていなかった。
気づいたら家にいて。
ただ呆然と、言われるがまま。
お風呂へ入った。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。