短刀達の部屋へ行くと、僕が近付いてくる気配を察知したのか、待っていましたと言わんばかりに皆が正座待機していた。
中には短刀以外の刀も混じっており、光忠と小豆がお菓子やら飲み物やらを運んでくる。
今剣や乱が目を輝かせると、壁を背もたれ代わりに胡座をかいている薬研が口を開いた。
例え親しい仲でも僕にとって面白かろうが、皆からすればつまらない話だってある。
短刀達からの期待が高まったことで、プレッシャーが掛からないようフォローする薬研は流石だと思う。
囲まれる形で皆の前に座り、早速学校での出来事を色々と話した。
こういう時、短刀達に負けず劣らず興味を惹かれるだろう陸奥や鶴は出陣でいないので、帰ってきた後からまた騒がしくなりそうだ。
“マレウス”の名が出ると、信濃や厚が「出た!マレウス先輩!」と再度名前を呼ぶ。
短刀達には学校の話を度々しているので、会わずとも生徒の名前や特徴を把握している者が大半だ。
中でもマレウス殿については、ツイステッドワンダーランドで五本指に入るほど高い魔力を持つ妖精の王族と最初の話で説明したのだが、インパクトが強過ぎたのか皆は「すげー!」と口を揃え、名前もすんなり覚えた。
平野の言葉に「本人はそうしようとしたんだけど……」と僕は話を続けた。
貞ちゃんと獅子王が互いに笑いながら言うが、僕もセベクに会った時は同じことを考えていた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。