恐る恐るという様子で、彼等は問う。
こめしょーは唸った。
それの意味がわからなくて、首を傾けた。
驚いた。
無意識のうちに唇が震えたのだろう。息が漏れたのが分かった。
魔法が使えない。
彼はそれをなんともなしに語るが、この国にとって、この世界にとって、それは珍しいだなんて、陳腐な言葉では表せないほどの重さで出来ている。
「ほら」と彼は机においてあった、自身のシャープペンシルを取ってみせた。
彼の手がそれを隠すように閉じる。そして開くと、そこには先程のシャープペンシルではなく、一つ赤い花が揺れた。
彼がもう一度手を握ると、花は無くなりもとのシャープペンシルが、鈍く光った。
彼に続けて「後で見せてあげるね」と言われた。
得意げに言うので、少し楽しみにしておこう。
それが何なのか俺達はわからなかったが、彼等はどこか腑に落ちたようだ。
「だからか」なんて言いながら、二人で目を合わせて頷き合っている。
MENの口から聞くとは思わなかった。俺もそれには同意してしまうが。
そんな俺達に二人は笑った。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。