第16話

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2021/06/13 12:36

《まい》


受験会場に着くと、そこには人で溢れていた。

どこを見ても、私と同じように制服を着ている人で溢れている。

どうしよう……緊張する!

私、大丈夫かな……。

ちゃんと全部解けるかな?

ミスしたりしないかな?

……不安はたくさんだけど。

私はお兄ちゃんのハグだけで、きっと誰よりも頑張れる!

お兄ちゃんのためにも私は絶対に受かる!

私は深く息を吸って、深呼吸した。

よし、頑張ろう。

試験監督らしき先生が、問題用紙を配る。

そして、数分間の沈黙の後_____




「始めっ!」





私は問題に向かった。




____________________





散々だった。


全然ダメだった。


やったことのある問題だというのはわかった。


なんのワークのどの辺りにある問題だというのもわかった。


でも、どうしても解き方がわからなかった……。


漢字の熟語も1文字はわかるのに、もう1文字が出てこなかったり。


計算間違いを直していたら、時間が来てしまったり。


解いた本人になら痛いほどわかること。


落ちちゃった……。


私、行きたかった学校に行けないよ……。


あんなに、1年間頑張ったのに。







まい
ただいま……
ママ
おかえり!どうだったの……?

お母さんは私がドアを開けた瞬間に、勢いよく聞いてきた。
まい
ははっ……ごめんね……

私は薄く笑った。

笑うしかなかった……。
ママ
そう……
まいはよく頑張ったよ

お母さんは私を抱きしめて、頭を撫でてくれた。

私は涙が出そうだった。

お母さん……

ごめんね、ごめんね……

あんなに応援してくれていたのに。

塾の送り迎えとか、お弁当作ってくれたりとか……。

いっぱいしてくれたのに。



それに_______



私はきっと、親にとって世界で1番の裏切りをしてるね。

ごめん、ごめんなさい……。

ただただ心の中で謝るしかなかった。

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