《まい》
受験会場に着くと、そこには人で溢れていた。
どこを見ても、私と同じように制服を着ている人で溢れている。
どうしよう……緊張する!
私、大丈夫かな……。
ちゃんと全部解けるかな?
ミスしたりしないかな?
……不安はたくさんだけど。
私はお兄ちゃんのハグだけで、きっと誰よりも頑張れる!
お兄ちゃんのためにも私は絶対に受かる!
私は深く息を吸って、深呼吸した。
よし、頑張ろう。
試験監督らしき先生が、問題用紙を配る。
そして、数分間の沈黙の後_____
「始めっ!」
私は問題に向かった。
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散々だった。
全然ダメだった。
やったことのある問題だというのはわかった。
なんのワークのどの辺りにある問題だというのもわかった。
でも、どうしても解き方がわからなかった……。
漢字の熟語も1文字はわかるのに、もう1文字が出てこなかったり。
計算間違いを直していたら、時間が来てしまったり。
解いた本人になら痛いほどわかること。
落ちちゃった……。
私、行きたかった学校に行けないよ……。
あんなに、1年間頑張ったのに。
お母さんは私がドアを開けた瞬間に、勢いよく聞いてきた。
私は薄く笑った。
笑うしかなかった……。
お母さんは私を抱きしめて、頭を撫でてくれた。
私は涙が出そうだった。
お母さん……
ごめんね、ごめんね……
あんなに応援してくれていたのに。
塾の送り迎えとか、お弁当作ってくれたりとか……。
いっぱいしてくれたのに。
それに_______
私はきっと、親にとって世界で1番の裏切りをしてるね。
ごめん、ごめんなさい……。
ただただ心の中で謝るしかなかった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。