年が明けて2日目。
珍しくスケジュールの空いた正月を、
TWICEのメンバーは宿舎で過ごしていた。
リビングにはエアコンの温風と
みかんの甘い匂いがゆるく漂っている。
ソファにはミナ、ダヒョン、ツウィが静かに座り、
半年ほど前に話題になっていた韓国ドラマを
ぼんやり眺め、
床ではモモ、サナ、チェヨンがトランプを広げ、勝っただの負けただのと、正月らしい騒がしさを作っている。
リビングの喧騒を少し離れた場所から眺めていたのが、
ダイニングテーブルで向かい合うナヨン、ジョンヨン、ジヒョ、あなたの4人だった。
いつもなら分刻みで動いているはずの時間が、
今日はやけにゆっくり流れている。
何もしなくていい、どこにも行かなくていい。
そんな休暇の空気が、
宿舎全体をやさしく包み込んでいた。
ダイニングテーブルでは、あなたがマグカップを
手にしたままリビングの様子を眺めていた。
笑い声が重なり合うのを聞きながら、
時折視線だけを向ける。
加わるでも、離れるでもない、ちょうどその中間。
そんな中、あることに気づいたナヨンが
身を乗り出して、口を開いた。
ナヨンは甘える声で懇願しながらあなたに抱きつく。
ジヒョとジョンヨンは、また始まったと呆れるように
笑いながらグラスを口に運んだ。
完全に駄々をこねるモードだった。
至近距離で覗き込まれて、逃げ場はない。
ジヒョは苦笑いしながら、
未使用のグラスをあなたに渡した。
その言葉通り、ナヨンは腕を緩める気配もなく、
むしろ満足そうにあなたを抱いたまま揺れている。
逃れられないと悟ったあなたが小さく息を吐く。
それを合図にしたかのように、
ナヨンはあなたの頬にキスを落とした。
一連のやりとりを静かに見ていた1人のメンバー。
その視線に、サナだけが気づいていた。
あなたがそう言ったとき、
ナヨンはもう次の缶を開けていた。
“少し”の基準が、最初からずれている。
そう気づいた頃には、
グラスは2度、3度と満たされていた。
そう言いながら、ナヨンは注ぐのをやめない。
あなたの頬はいつの間にかほんのり赤く染まっていた。
椅子に深くもたれ、ぼんやりと天井を見る。
意識ははっきりしているのに、体だけが少し重い。
笑い声が遠く聞こえて、言葉を返すのに一瞬考えるようになっていた。
ジョンヨンから受け取った水を
ゆっくりと口に流し込む。
そのとき、横から軽い声が割って入った。
サナがいつもの調子で近づいてきて、
あなたの前に屈んだ。
サナはちらっとナヨンを見た。
責めるでもなく、笑いながら。
返事を待たず、あなたの腕を取る。
引っ張るのではなく、立ち上がるきっかけを
作るようなさりげない動きだった。
”え〜” と不満そうに声を上げるナヨンにサナは軽く
手を振り、あなたを連れてテーブルを離れた。
サナが案内したのは、
いつの間にかスペースの空いていたソファ。
ダヒョン、チェヨン、ツウィの姿はなく、
3人分のブランケットだけがソファの端に残っている。
周りを見る余裕もなくなっていたあなたに、
モモが状況を説明する。
そんな中、サナはあなたの背中にそっと手を添え、
自然な流れでミナの隣に座らせた。
間にクッション1つ分もない距離で。
突然のサナの行動に、ミナは一瞬だけ目を見開いて、
それから小さく瞬きをした。
サナは何事もなかったようにその場を離れた。
ソファには、2人きり。
テレビの画面は暗いままで、
代わりに部屋の照明が柔らかく2人を照らしている。
隣にいるあなたの存在をいつもよりはっきりと
感じながら静かに息を整えていたミナが、
ようやく口を開く。
広々としたソファに似つかないこの距離感に、
そろそろ耐えきれなくなっていた。
あなたの体温が、服越しに伝わってくる。
お酒のせいか、さっきより少しだけ熱を持った空気が
ミナの腕のあたりに触れていた。
あなたがまた何か言おうとして、少し間を空ける。
その沈黙が、なぜか一番苦しかった。
ミナは唇を結び、
心臓の音が静まるのをただ待っていた。
あなたがふわっとした声で話しかける。
語尾がいつもより柔らかくて、ゆっくりした間で。
ソファに身を預けて、ほわほわとした調子で
思いついたことをそのまま口にしていた。
ミナの肩が、ほんのわずかに跳ねる。
触れてはいないのに、触れているみたいで。
見ているだけでよかったはずなのに、
今は視線を向けるのも怖い。
落ち着かなければと分かっているのに、
落ち着かせる方法を知らなかった。
ミナは前を向いたまま、息を整える。
表情も変えずに、平静を装った。
そこで、やっと視線を向ける。
あなたは驚きもせず、いつもより潤んだ目で
ミナのことを見つめていた。
少しの沈黙。
胸の奥が、またうるさくなる。
でも、それだけで終わらせたくなくて。
ミナは指先をぎゅっと握ってから、
ゆっくり口を開いた。
言葉は短かったけれど、はっきりしていた。
誤魔化しも、逃げ道もない。
あなたは一瞬、目を大きくして。
それから、ふっと力が抜けたように笑った。
その続きの言葉を待っていた、その途中で。
あなたの頭がゆっくりミナの肩に傾いた。
耳元で規則正しい呼吸音が繰り返される。
ミナは、しばらくそのまま動けずにいた。
肩に預けられた重みと、さっきの「うん」が
頭の中で何度も反響する。
届いたのか、届いていないのか。
答えは分からない。
ミナはそっと、自分の肩に寄りかかったままの
あなたを見下ろす。起こさないように、声を潜めて。
そう呟いてから、そっと視線を落とす。
ソファの上であなたの手が無防備に開かれていた。
力の抜けた指先が、少しだけ温かい。
迷ってから、ミナはゆっくりと手を伸ばす。
触れるか触れないかの距離で一度止まり、
それから指先だけを重ねた。
窓の外は静かで、正月特有の音の少ない時間が流れ、
時計の秒針だけが一定の速さで進んでいる。
ミナは重ねたままの手を動かさずに、
ただその温度を覚えようとした。
今日言った言葉も、返ってきた声も、全部。
答えはまだ、ここにない。
それでも、この瞬間だけは確かにそこにあった。











編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。