ザッ…と、一歩、彼と私の距離が縮まった。
私の想い人である彼が普通の高校生であれば、私はこの距離感に大混乱を巻き起こし顔を真っ赤に染めて大歓喜したことであろう。
だが、こいつは少しぶっ飛んでいる。
色々な意味で……ぶっ飛んでいるのだ。
まずその顔を何とかしろ。
綺麗な顔が勿体ないだろそんな眉間に皺寄せてたら。
周りから見たらヤンキーのそれだぞ、その顔は。
あと謎のオーラ纏うな。怖いわ普通に。
イライラがひしひしと伝わってくる。
このまま私ぶっ飛ばされるのではないか???
有り得そう。こいつ普通に女でも殴りそう。
彼の苗字を口にすると、目の前の男は顔を歪ませた。
こんな、誰が聞いてるかも分からない廊下でそんなこと叫ばないで頂きたい……!!!!!
ストーカーだと勘違いされるだろうが…!!!!!!
ヒュっ、とその場から消える。
私の個性、瞬間移動。これを使用し逃げた。
何かから逃げる時、避ける時など非常に便利だ。
面倒事を回避できるし学校に遅刻することもほぼないし。
割と使える個性。いやぁ、助かる。
そんなことを考えながら、
私は音楽室へと足を踏み入れたのだった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。