第5話

Episode.5【4日目】完
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2025/08/31 15:19 更新
  平日の図書館は静かなものだった。
夕方になれば学生や子供もいるのだろうが、今は地元のおじ様方がちらほらいるだけだ。

入口ですれ違ったおじいさんが、ダーマーさんの姿を驚いたように二度見していた。
確かに日本人の平均身長より数十センチ高く、顔付きも強面の外国人の男性など滅多に会わないだろう。

ここの図書館を使うのは初めてだ。
とはいえ図書館の作りというのはどこもそれほど変わりないようで、小さい頃に行ったことのある図書館も似たような配置だったな、と懐かしくなった。

一階が雑誌や子供向け書籍、二階は専門分野に特化していて、閲覧用のテーブルが並んでいるらしい。

周りの様子を見伺いながらダーマーさんに話しかける。
あなた
二階に行きましょうか
  小声でそう促す。

一階にかけて二階も人の姿が少なく、私たちを含めて4人しかいなかった。
とはいえ、読書の邪魔をするにはいかないので、なるべく小声で会話する。
あなた
どんな本を読みたいですか?一緒に探しますよ
ヴァンダーマー
とりあえずは地図が何か、
地理の分かるやつを読みたい
あなた
分かりました、探してみます
  地理コーナーを探して、比較的分かりやすそうな本を数冊手に取ってみる。
あなた
さっと目を通すんならこの辺がいいと思うんですけど…
  抱えた本を渡せば、表紙を眺めた後に受け取ってくれた。

そういえばダーマーさんの国は地球のどこら辺にあったのだろう。ダーマーさんに問いかければ確かここだ、と指さす方に目を向けた。

指先には海が広がっており、やはり別の世界のことなのだと不思議な気持ちになった。
あなた
ロスサントス以外はここの地球と同じなんですか?
ヴァンダーマー
ああ…ロスサントスが無いってこと以外は
ほとんど同じだ
  ダーマーさんが住んでいた国がない世界か…

やっぱり腑に落ちないというか、すっと頭に入ってこない。

少しして、ちらりと窺った横顔は真剣な面持ちで本を読んでいた。
あなた
他に読んでみたい本はありますか?
  小さく訪ねてみる。

ダーマーさんは本から顔を上げて、少し考えてから言った。
ヴァンダーマー
……軍に関するものがあれば
  と呟いた。

軍、か。自衛隊とかでもいいのだろうか。分かりやすい本があればいいが。
あなた
ちょっと探してみますね
ヴァンダーマー
あぁ、頼む
  声を掛けた時には既に、ダーマーさんの視線は本に戻っていた。












なるべく分かりやすそうな自衛隊の本と、世界の軍艦の載った本を確保しておいた。

ダーマーさんの元に戻り、進捗を聞こうとしたその時だった。
あなた
え…?
──透けていた。

俯いて本を読むダーマーさんの背中越しに、向こうの景色が透けていたのだ。

駆け寄り、肩に手を伸ばす。透けていたはずの肩は、私が手を置いた瞬間にはもう元に戻っていた。

手の平が筋肉質な感触を伝える。
ヴァンダーマー
どうした
  振り返ったダーマーさんは、何事も無い様子で私を見つめた。
あなた
ダーマーさんが…一瞬、透けていました
ヴァンダーマー
それは…どういうことだ
  ダーマーさんの疑問には答えられず、ただ「分かりません」とだけしか言えなかった。

ダーマーさんは静かに唸りながら考え込んだ。
ヴァンダーマー
…あなたの下の名前が接触する前、一瞬意識が遠くなった。ただ…それだけだったはずなんだが、
あなた
何か…例えば、ロスサントスに関係あったり…
  そう言うと、ダーマーさんの表情が曇った。
ヴァンダーマー
関係がないとは言えんかもしれんな
  心配になりもう一度、体に触れたい衝動に駆られたが寸前でやめた。

このまま居なくなってしまうのかと思った。
もちろん、元の世界に帰れるとするならば、それが大前提ではある。
ただ、あまりにも唐突すぎたから。
ヴァンダーマー
少し、ぶらついてくる
  ダーマーさんは席を立ち、別のコーナーへ行ってしまった。

──この間に消えたらどうしよう。

心のどこかで孤独感を感じ、追いかけようとしたが足がくすんだ。

私が歩みをゆるめているうちに、ダーマーさんとの距離が離れていく。
行かないで──手を伸ばそうとした。


両手に積み重なる本の重みが、手によく伝わった。















図書館の扉をくぐり、来た道を戻る。
何冊か借りた本が入った袋を引き受けてくれたダーマーさんは消えずに隣にいて、家に着く頃には私の気持ちは少しづつ元通りになっていた。
あなた
ダーマーさん甘いものは食べれますか?
ヴァンダーマー
あまり嗜むことはないが食べれる
あなた
実は…
  肩にぶら下げていた小型のバッグから、白い箱を取りだした。
あなた
実は図書館にあるカフェエリアでプリンを買いまして、ダーマーさんが良ければ一緒に食べませんか
  ダーマーさんの口元が微笑んだ。
ヴァンダーマー
喜んでご一緒しよう
  その笑む表情を見て、静かに安堵する。
ヴァンダーマー
あなたの下の名前…先程は心配させてすまなかった。
私が此処に居る限り、お前を一人にはさせないと約束しよう
 その言葉に、少なからずとも信頼を覚えた。
あなた
…ダーマーさん何か悩み事があったら私に言ってください。微力にしかならないかもしれなせんが、力になりたいんです
ヴァンダーマー
そうか…そうだな。人に相談しないのは私の悪い癖だ。
早速だが、後でお前に話したいことがある。いいか
  頼ってくれている。それは誰でも務まるわけではない。
彼が一人で抱え込まないように、傍に居れる私が力にならなければ。
あなた
それはもちろん。
ではこれ食べちゃいましょう
  箱から取りだしたプリンを持ち上げる。
ヴァンダーマー
ああそうだな
   頭を使うとよく甘いものが欲しくなるとは、よくいったものだ。
一口食べた瞬間からその甘味に、口に運ぶ手が止まらなくなった。

すぐに無くなったプリンは、ダーマーさんも同じのようで空になったプリンは一緒に片付けた。


一息ついたところで、ゆっくりとダーマーさんが口を開いた。
ヴァンダーマー
実は私が暮らすロスサントスという国は、″生″の仕組みが違うんだ
あなた
生の仕組みが違う…?
  パッとしない言葉に、同じ言葉を繰り返した。
ヴァンダーマー
ロスサントスは基本、″本当に死ぬ″ことがない
あなた
つまり不死身ってことですか?
ヴァンダーマー
″基本″そうだと思っていい。だが生きる気力が無くなり死に直面した時、″本当の死″に襲われる
ヴァンダーマー
襲われたやつはこの世界同様、意識がなくなり、心臓の鼓動が止まり、そして死ぬ
あなた
もしかして……
 ダーマーさんは一呼吸おき、私を見つめて言った。
ヴァンダーマー
私はその″本当の死″に直面した。
脳中を銃弾で突き抜かれ、今頃私の体は蘇生もできなくなっているだろう
あなた
じゃあこの世界に来たのも、それが原因ってことですか
ヴァンダーマー
そうだな。だが、私はこの世界で罪を犯してしまった
あなた
?…その罪ってなんのことですか
  あの鋭い瞳が俯き、細くなる。
ヴァンダーマー
先程も言った通り生きる気力がないと死ぬのだが、私はこの世界を通じて″生きたい″と思ってしまった
あなた
……生きたい
  そうか、ダーマーさんは前の世界では生きる気持ちさえなくなって…
ヴァンダーマー
あなたの下の名前、お前のおかげだ。
お前が私に生きる力と、生に対しての執着を教えてくれた
あなた
私が…私がダーマーさんを生きたいって思わせた…?
ヴァンダーマー
あぁ、だがそれが引き金となり、私はロスサントスへ戻らなければならなくなった
あなた
ロスサントスに?どうやって…
  考えた瞬間、あの出来事を思い出した。
ヴァンダーマー
図書館で私が透けて見えただろう。
あの時はすぐ戻ったようだが、それは私自体をこの世界から消滅させるということだ
あなた
つまりロスサントスに帰れる…ってことですね
ヴァンダーマー
…そういうことだ
  そっか、ダーマーさんもう少しで帰れるんだ。

そう納得しながらも、なぜかすぐには喜べなかった。
今にでも良かったですねって言ってあげたいのに、私の気持ちが心が素直になれない。
ヴァンダーマー
あなたの下の名前安心しろ。突然お前の傍から消えたりはしない。帰りそうになった時はすぐに知らせる
あなた
…分かりました。絶対ですよ、絶対に一言くださいね
ヴァンダーマー
ああ約束する
  だんだんとダーマーさんを映す視界が滲み、涙が頬をつたる。気づかないうちに涙が溜まっていたようだ。

その瞬間ダーマーさんの手が私を引き寄せ、体が胸元に納まった。
ヴァンダーマー
大丈夫だ。私はまだここにいる
  低音の声が耳に響く。
不思議とダーマーさんの声は心を落ち着かせる。

──ダーマーさんが帰るまで、私はダーマーさんの隣にいる。
ダーマーさんのためにも、私のためにも。

抱きしめる彼の体を、私も強く返した。

──この温もりがある限り…


私はダーマーさんの世話をする。

































帰宅したら白髪の男に遭遇しました【van】
Episode.5【4日目】
  こんばんは、さささ塔です。
完結まで半分を切りました。この回でだいぶ全貌が見えてきたと思います。
今回続きを出すのが遅くなりましたが、終盤に差しかかりましたので続々と出てくると思います。
もしかすると、今日、明日で完結するかもしれません。
最後に、誤字脱字ありましたらすみません。度々読み直して修正しております。
では次回お会いしましょう。











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