私は大きく息を吸い込み、目の前の校門を見上げた。
私立音羽(おとわ)高校——今日から三年間通うことになる学校。
青空に映える校舎の白い壁がまぶしく、門の前では新入生たちが緊張した面持ちで足を止めたり、すでに友達と笑い合ったりしていた。
私はぎゅっと鞄のストラップを握りしめた。
中学時代はそこそこ仲の良い友達もいたけど、特に部活に熱中したわけでもなく、クラスでも目立つほうではなかった。
でも、高校では——何か夢中になれるものを見つけたい。
そんな漠然とした思いを抱えながら、一歩、校門の中へ踏み出した。
突然、自分の名前が呼ばれたような気がして、一瞬息が止まった。
心臓がバクバクする。勝手に自分の名前と勘違いしてしまった。
体育館の壇上に上がった女の子が、堂々と入学の挨拶を述べ始める。私はそっと胸をなでおろしながら、周りを見渡した。
広い体育館には新入生がずらりと並び、保護者や先生たちが静かに座っている。
校長先生の話がなかなか終わらず、私はそっとあくびを噛み殺した。
そのとき——
隣に座っていた女の子が、くすっと笑いながら小声で囁いた。
そう言って微笑んだのは、肩までの黒髪をツインテールにした女の子だった。
初めての友達ができたかも——そう思うと、少しだけ心が軽くなった。
入学式が終わり、クラス発表があるということで、生徒たちはぞろぞろと体育館の外へ向かっていた。
玲奈と並んで掲示板の前へ向かう。
思わず玲奈と顔を見合わせて笑う。
クラスが決まると、少しずつ高校生活が実感として湧いてきた。
玲奈が興味深そうに聞いてきた。
ちょうどそのとき——
廊下のあちこちで、先輩たちがパンフレットを配りながら勧誘していた。
玲奈と一緒に音楽室へ向かうことにした。
音楽室の扉を開けると、そこには先輩たちが楽しそうに楽器を演奏していた。
トランペット、サックス、フルート、クラリネット——
様々な楽器が揃い、音楽が部屋いっぱいに広がっている。
玲奈が目を輝かせながら言う。
にこやかに声をかけてくれたのは、2年生の部長らしき先輩だった。
玲奈はパンフレットを見ながら、「トランペットとか、いいなぁ」とつぶやく。
私はふと、部屋の隅に目を向けた。
そこには、大きな太鼓、シンバル、ティンパニ、マリンバ——打楽器の数々が並んでいた。
振り向くと、一人の女子先輩がにこっと微笑んでいた。
瑞希先輩はスティックを手に取り、軽やかにスネアを叩いた。
タン、タン、タタタン——
瑞希先輩はにこっと笑いながら、スティックを私に差し出した。
このとき、私はまだ知らなかった。
この小さな「興味」が、私の高校生活を大きく変えることになるなんて——。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。