第4話

新しいリズム
27
2025/03/19 09:00 更新
あなた
ふぅ……緊張するなぁ……
私は大きく息を吸い込み、目の前の校門を見上げた。

私立音羽(おとわ)高校——今日から三年間通うことになる学校。

青空に映える校舎の白い壁がまぶしく、門の前では新入生たちが緊張した面持ちで足を止めたり、すでに友達と笑い合ったりしていた。
あなた
みんな、もう知り合いとかいるのかな……?
私はぎゅっと鞄のストラップを握りしめた。

中学時代はそこそこ仲の良い友達もいたけど、特に部活に熱中したわけでもなく、クラスでも目立つほうではなかった。

でも、高校では——何か夢中になれるものを見つけたい。

そんな漠然とした思いを抱えながら、一歩、校門の中へ踏み出した。
MOB
では、新入生代表、あなたさん
あなた
……え?
突然、自分の名前が呼ばれたような気がして、一瞬息が止まった。
MOB
——では、新入生代表、あなたさん、よろしくお願いします
あなた
あ、違った……
心臓がバクバクする。勝手に自分の名前と勘違いしてしまった。

体育館の壇上に上がった女の子が、堂々と入学の挨拶を述べ始める。私はそっと胸をなでおろしながら、周りを見渡した。

広い体育館には新入生がずらりと並び、保護者や先生たちが静かに座っている。
あなた
長いなぁ……
校長先生の話がなかなか終わらず、私はそっとあくびを噛み殺した。

そのとき——
女の子
眠そうだね?
隣に座っていた女の子が、くすっと笑いながら小声で囁いた。
あなた
えっ? あ、いや……ちょっと退屈かなって……
女の子
だよねー。私もさっきから何回あくびを我慢したことか……
そう言って微笑んだのは、肩までの黒髪をツインテールにした女の子だった。
女の子
ねえ、あなたの名前は?
あなた
えっと、あなたです
宮村 玲奈
私は宮村 玲奈! あなたちゃん、よろしくね!
あなた
うん、よろしく!
初めての友達ができたかも——そう思うと、少しだけ心が軽くなった。
入学式が終わり、クラス発表があるということで、生徒たちはぞろぞろと体育館の外へ向かっていた。
宮村 玲奈
クラス、一緒だといいね!
玲奈と並んで掲示板の前へ向かう。
宮村 玲奈
えっと……あった! 1年3組!
あなた
ほんと? ……あ、私も1年3組だ!
宮村 玲奈
やった! 一緒だね!
思わず玲奈と顔を見合わせて笑う。

クラスが決まると、少しずつ高校生活が実感として湧いてきた。
宮村 玲奈
そういえば、部活どうするか決めてる?
玲奈が興味深そうに聞いてきた。
あなた
うーん、まだ決めてないけど……高校では何か新しいこと始めたいなって思ってる
宮村 玲奈
わかる! 私も、中学ではあんまり部活に力入れてなかったし、せっかくだからガッツリやりたいんだよね!
あなた
うんうん、でもどんな部活があるんだろう?
ちょうどそのとき——
先輩
新入生のみなさーん! 吹奏楽部で一緒に青春しませんかー?
先輩
初心者も大歓迎! 一緒に演奏しましょう!
廊下のあちこちで、先輩たちがパンフレットを配りながら勧誘していた。
あなた
わぁ、すごい人気だね……!
宮村 玲奈
吹奏楽部かぁ……楽器とかできる?
あなた
えっと……小学校の頃、少しピアノを習ってたくらいかな
宮村 玲奈
そっかー。でも、吹奏楽ってかっこいいよね!
あなた
うん、ちょっと見に行ってみる?
玲奈と一緒に音楽室へ向かうことにした。
音楽室の扉を開けると、そこには先輩たちが楽しそうに楽器を演奏していた。

トランペット、サックス、フルート、クラリネット——

様々な楽器が揃い、音楽が部屋いっぱいに広がっている。
宮村 玲奈
おぉ……すごい!
玲奈が目を輝かせながら言う。
先輩
見学? いらっしゃい!
にこやかに声をかけてくれたのは、2年生の部長らしき先輩だった。
先輩
吹奏楽部へようこそ! 興味ある楽器とかある?
宮村 玲奈
えっと……
玲奈はパンフレットを見ながら、「トランペットとか、いいなぁ」とつぶやく。
先輩
あなたちゃんは?
私はふと、部屋の隅に目を向けた。

そこには、大きな太鼓、シンバル、ティンパニ、マリンバ——打楽器の数々が並んでいた。
あなた
打楽器……?
先輩
お、パーカッションに興味ある?
振り向くと、一人の女子先輩がにこっと微笑んでいた。
藤崎 瑞希
私は藤崎 瑞希、パーカッションパートのリーダーだよ!
あなた
えっと……打楽器って、初心者でもできますか?
藤崎 瑞希
もちろん! むしろ、打楽器って基礎が大事だから、最初からしっかり学ぶのがいいんだよ!
瑞希先輩はスティックを手に取り、軽やかにスネアを叩いた。

タン、タン、タタタン——
あなた
わぁ……!
藤崎 瑞希
ね、かっこいいでしょ?
瑞希先輩はにこっと笑いながら、スティックを私に差し出した。
藤崎 瑞希
試しに、叩いてみる?
このとき、私はまだ知らなかった。

この小さな「興味」が、私の高校生活を大きく変えることになるなんて——。

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