第33話

小町藤
893
2025/05/09 11:00 更新
 ドス黒い空から降る冷たい雫が私を強く打ち付けた。
15歳になった年に、私はポートマフィアを抜けた。9歳に首領に拾われ、今まで約五年間、お世話になった人、場所、私の命を繋いでくれたもの達全てを裏切った。

 街中の監視カメラの死角を利用し移動し続け、今はヨコハマの市街地から離れた場所にいる。おそらく今頃ポートマフィアは血眼になって私を捜索しているだろう。

 そこは貧富の差が激しいエリアだった。多くの人が飢餓で倒れ、そこら中に横たわっている。私ももう数日食べていない。集中力と体力が切れ、路地裏に倒れ込んだ
あなた
っ……はぁ……
m.
女か?見ねえ顔だな。
m.
はっ、迷い込んだのか?まだガキじゃねえか、ラッキーだな…この辺りの女は全員痩せこけてみっともねえ。久しぶりの上玉だ
m.
さっさとヤっとこうぜ。ここでいいだろ。わざわざ移動する必要も無ェ。
 三人の男が、下品な顔をして私を覗き込む。これから私の身に起こるであろう事態を想像して寒気がした。こんなとこでこんな奴らにやられるなんて最悪だ。

 戦闘に使える異能だったら良かったのになと、自分の異能を恨んだ。生憎拳銃は置いて逃げてきたし、持ってきていたとしても、無益な殺しはしたくない。だからといってこの場で貞操を失うなんて真っ平御免だ。
あなた
お兄さん達、
m.
あ?意識あんのかよ。めんどくせぇな
あなた
きっしょ
m.
は?
 背後に回り込んで頭に蹴りを入れた。もう一人の男が動揺している間に手刀をして気絶させる。最後の一人は倒れた仲間を見てオロオロしていたから追ってこないと見てすぐに走り出した。とりあえず今は逃げることが最優先。

 残念ながら五年のキャリアが微力ながら生きた。

 男たちを気絶させた後は監視カメラの死角を縫ってエリア外へ出た。必死すぎて、私は曲がり角から来る人の気配を察知できず、ぶつかり転ばせてしまった。
あなた
っあ、すみませ…!
女性
ってて……大丈夫だよ。アンタこそ大丈夫かい?おや汚れているじゃないか。
 しまった。ここはカメラに映る。踵を返して映らない場所に移動しようとしたが、ぶつかってしまった女性に掴まれ、離されなかった。

 その女性は髪を肩の少し上で切り揃え蝶の髪飾りをつけた、気の強そうな女性だった。
あなた
だ、大丈夫です……!すみません私もう行かないと…
 見つかってしまう。あの人に。あの人は勘が鋭いから。しかし、私の必死の抵抗もその女性には通用しなかった。
女性
……顔を見られたらまずいね?
あなた
っ、は、い……
女性
分かった。アタシの陰に隠れな
あなた
でも……ほんとに……
女性
いいから
 半ば強引に引っ張られるようにして行ったのは煉瓦造りのとあるビルだった。

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