これは、心臓もちと焼けてんな。めんどくせェ......少しぐらいなら大丈夫か?
そう言って不死鳥が取り出したのは、恐らく仲間の治療の為に使用したであろうメス。
受け取ったメスを黒炎で加熱消毒し、火拳の死体から焼けた焦げた部分だけを取り除いていく。にしても派手にいったな。
その様子を不死鳥達に監視されながら作業を続けていると、ふと不死鳥が口を開いた。
「相当腕のいい医者なんだろうねい」と感心したように頷く不死鳥を横目に、次の工程に入る。これが1番集中力のいる作業だ。
まずは骨から、黒炎で背骨、肋、脊髄と形どっていく。次に肉付け、外側はある程度の衝撃を耐えられるよう弾力が出るように黒炎を張る。そして最後に臓器、血管、神経と1つ1つ繋げていく。
単純に見えて、とんでもない集中力が必要なこの作業。更にちゃんとした医学の知識がないと、とても真似出来ない芸当だ。
どこにも問題がないことを確認し、大きく息を吐き出した。こんなに集中したのは久々だ。
しかしまだ最後の工程が残っている。両手に黒雷を纏わせ、電流を調節する。そして火拳の体に手を当て、電流を流した。そう、簡易AEDだ。
しばらく続けていると、そのうち俺の掌に鼓動が戻り、心做しか火拳の顔色が良くなってきた。そして...
血を吐き出したと同時に呼吸をし始めた火拳。それに気づいた不死鳥達が目を見開き、俺を押しのけて火拳を囲んだ。
特に汚れてもいない服を払いながら不死鳥達にそう伝えると、不死鳥達はバタバタと動き始めた。俺はそんな奴らを近くの切り株に座って眺める。
そんな時、十二番隊の隊長がこんな事を零した。
まァ、そんなのしったこっちゃねェがな。
そろそろマリンフォードに戻ろうと腰をあげると不死鳥に引き留められた。
お前ら敵だった俺に懐きすぎでは??
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。