周りはとっくに暗くなっていた。
玄関のドアを開け、体をソファに預ける。
今日もバイト尽くしで、体はとっくに限界を迎えていた。
バックの中から封筒を出して、今月分の給料を数える。
1,2,3,4...50万円ぐらいかな。
やっぱり、バイトの掛け持ちって大変だけどいいな。
いっぱい働けば働くほど、お金がたまる。
なるべく音をたてないようにドアを開ける。
扉を開けた先に目に飛び込んできたのは、母さんがパジャマを着て、ベットに横たわっている姿。
ペットボトルにたくさん入っているはずの水が、減っていた。
お母さんのパジャマを変えるために布団をはがす。
申し訳なさそな目でこちらをのぞき込むように話す母に、少しあきれていた。
母さんはすぐ謝る癖がある。
母はいつも弱気なのか、いつも下手に出てしまう。
私はその言葉を聞いて、母さんの部屋を後にした。
"強い子に育った"...って言ってたけど、本当は全然違うよ母さん。
私は強い子なんかじゃない。
バイトに落ちてばかりで、最近は精神の状態は不安定。
でも、バイトももっと掛け持ちしないと、生活が厳しい...
自分の情けなさに、イラ気が差すのと、疲れが体を取り巻くような感触がした。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!