「あなた、部屋気に入ったか?」
「あ、うん……」
「知り合いに聞いて家具揃えた」
「そんなことまでしてもらって申し訳ないっていうか……」
「気にすんなって」
「……うん」
数日後、私の部屋が準備できたようで、春千夜さんがカードキーを渡してくれた。隣の部屋みたい。知らない人よりはいいけど、逆に気まずいような……
部屋に入ると春千夜さんの部屋と元は同じだと思えないくらい家具やインテリアで綺麗な部屋になっていた。
「女ってこーゆーのすきだろ」
「まぁ、私は好きですけど……」
「ほら、お姫様のベッド」
お姫様のベッドってなんだよって思ったら天蓋付きのベッドだった。
備え付きじゃないクローゼットにドレッサーまである……
「……これは」
「お前あのキャリーバッグとだせぇショルダーバッグのもんしか荷物ねぇんだろ。だから服とか靴とかやるよ」
「えっ、怖」
「あ?怖くねぇだろうが!」
「あー、そういうのが怖くてみんなバイトやめたのか……納得……」
「言っとくけどお前以外にこんな厚遇してねぇからな」
服についているタグを確認するとどれもブランドのもので卒倒しそうになった。
「……春千夜さん疲れてるでしょ、帰ったら……」
「なに、俺といたくねぇの」
「そうは言ってないけど……一人の時間もほしいっていうか……」
「お前は俺の持ちもんなの、そこのところ理解しとけよ」
そう言ったくせにわりと素直に部屋を出ていったから拍子抜けした。
1人でご飯を食べて1人でお風呂に入って1人で寝た。お姫様のベッドで落ち着いて寝られるかなって思ったけど、ふかふかで寝心地が良くて気づいたら朝だった。
「おはよー」
「……はるちよさん」
「今日休みだろ、付き合えよ」
「えっ、いやだ」
「お前に拒否権あるわけねーだろ、飼い主の言うことも聞けねぇのかよ」
目が覚めたら隣で春千夜さんが寝ていて心臓止まるかと思った。傷は気になるけどやっぱ顔だけはいいな、目は綺麗な緑色でまつげもながいし。分けてほしい。じっとまつげを見ていたら「何見てんだよさっさと準備しろ」といって顔を隠しながらベッドからおりていった。照れてんのかな。それからクローゼットを漁って服を投げつけてきた。
「それ着ろ」
「はい……」
「玄関で待ってる、早く来いよ」
そういって寝室を出ていってしまった。あんまり待たせるのも悪いけど、女の子は準備に時間がかかる生き物だから早く来いなんて言われても無理だ。しかも寝起きなんだから……
「あなたまだー?」
「もうちょっとだから……!」
走って玄関に向かうと靴が準備されていた。あんまりヒールが高くないやつ。
「足、出せ」
「あ、はい……」
「ちょうどいいな、俺天才かも」
「サイズって……」
「勘だよ勘」
シンデレラのように靴を履かされて、手を引かれて部屋を出た。言動は最悪なのにこうやってお姫様扱いされると本当調子狂う。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。