今日は、夢が溜まる日。
勿論、見るに決まってる。
今回は何が出てきて、何が見えるんだろう、
そう期待した。
見えたのは、残り1分で、ビルの中、爆弾を解体している萩原。
時間はどんどん過ぎていく。
と、同時に萩原もどんどん焦る。
『これは絶対時間内に解体できない、どうしよう、』
そう考えていると推測する。
残り6秒の所で、タイマーが止まった。
萩原が驚いて振り返ると、『もう間に合わないと判断したので、お金を渡して頂きました。』
そう言う隊員。
萩原は悔しさで心が満たされた。
自分の力の自信がなくなった。
でも、萩原は直ぐに笑顔を作って、
『ありがとな、間に合いそうに無かったんだよ!』と、口に出す。心の中に渦巻く闇が広がる。
『タバコ、吸っていい?』
萩原が隊員に聞くと。隊員は首を縦に振る。
『ありがとう。』
そう言って、萩原は、心に渦巻く闇ごと、この煙で消し去ろうと、煙草を吸い始める。
その間に、住民の避難をしてもらう。
『住民の避難、完了しました。』
『了解!んじゃまぁ、ゆるゆるとやっていきますか!』
少しは自信が戻ったのか、はたまた戻っていないのか、彼の作り笑いは完璧で、それは本人以外の誰にも判断出来ない。
順に、まだ解体できていないものを確認していく。
と、そこで萩原の携帯電話が鳴り始め、萩原は電話に出た。
『松田、何の用だ。』
相手は、もう1人の爆発物処理班エースだった。
『萩原、何のんびりしてんだ。さっさとバラしちまえよ。』
『そうがなりなさんな。
タイマーは止まってんだ。
そっちはどうなんだ?』
『嗚呼、開けてみたら、案外単純な仕掛けだったからな。あの程度なら、』
『3分もありゃ十分だ!だろ?』
『……ちっ、そっちはどうなんだ?』
『こっちは、3分って訳にはいかねぇな。
基本的には単純なんだが、何しろ、トラップが多い。どうやら、こっちが本命みたいだな。』
『ところでお前、ちゃんと防護服は来てるんだろうな。』
『はは、あんな暑っ苦しいもん、着てられっか!』
『馬鹿野郎!!死にてぇのか!』
『ま、そんときは仇をとってくれよ。』
萩原の落ち着いた声が響く。
『……怒るぞ』
『はは、冗談だよ冗談。
俺がそんなヘマする訳ねぇだろ。』
萩原は陣平の心配を笑い飛ばす。
『とにかく、さっさと終わらせて降りて来いよ。いつものとこで待ってるからな。』
『お、いいね、そう言うお誘いとあればエンジン全開といきますか!』
『……なにっ、』
爆弾のタイマーが復活した。
何故だかは分からない。
犯人視点を覗くと、警察に追われている途中、仲間がトラックに轢かれ、無くなったようだ。だから、爆弾のタイマーを爆発させ、警察官を殺そうとしたのだろう。
『どうした!萩原!!』
次は、陣平視点に移動する。
『みんな逃げろ!
タイマーが生き返ったぞ!!』
萩原の携帯が音を立てて落ちる。
きっと今萩原は爆弾から必死に離れているのだろう。
陣平はきっと必死に萩原の無事を願っている。
そんな願いも虚しく、ビルが爆発する。
『……っ、萩原ぁ……!!!』
陣平が叫ぶ。
この日は11月7日。
萩原の携帯に表示されていた。
そこで、予知夢は終わった。
私は、飛び起きた。
私の目には、大粒の涙が浮かんでいた。
この事は、萩原以外の4人に共有しなければならない。
萩原が出掛ける予定の今日。
このタイミングで招集しよう。
そして、LINEで、萩原を覗いた私達のグループLINEを即座に作り、開き、メッセージを打った。
『4人とも、今から私の部屋集合。
予知夢の話するから。』
そう送った。
すぐに返信が返ってきた。
零からは、『僕達4人という事は、萩原の話か。』
景からは、『了解!すぐ行くね!』
陣平からは、『なんかあったのか?』
班長からは、『予知夢、溜まったのか。』
と返ってきた。
取り敢えず、皆は私の部屋に来てくれるらしい。
数秒後にコンコンコン、ノックの音がする。
ドアに向かい叫ぶと、ドアが開き、急いで来たであろう4人が立っていた。
ここにいる4人の声が揃う。
零が冷静になったのか、聞いてきた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。