生暖かい風が、ボクの耳元を通り抜けていく
普段だったら、その生暖かさを嫌っていたが、今となってはそれもボクの“記念日”に相応しい演出と感じられる
暁色の地平線も、市街の影絵も、ゆっくりと流れる雲も、___全てボクの“記念日”の演出なんだと、ボクは思う
ボクを遮る者がいないか、辺りを見渡す
ボクは、いつもみんながいたフェンスの向こう側に立つ
落下地に誰もいないかを確認するため、ボクは下を覗き込む
そこには誰もおらず、使い古した焼却炉が小さくぽつんとあるだけだった
こんなところから落ちたら、きっと痛いだろう
__けど、それは一瞬のことだ
何もかも全てを失うが、一瞬の痛みしかない方
ここで生き続けるが、ずっと痛み続ける方
一瞬の痛みか、ずっと続く痛みか
ボクはその“痛み”について、考え続けた
不意に、身体がグラっと向こう側へ傾く
幸い、少しだけの傾きだったので、落ちることはなかった
だが、ボクは今の傾きで思ってしまった、見えてしまった
“ボクがいない世界線を”
その世界は、毎日が賑やかで明るく、ここに来る人なんて一人もいない
つまり、ボクがいなくなったほうがいいのだ
ボクは無意識に扉の方を向く
だが、その扉が開くことは無かった
カーディガンは脱いで
大好きなリボンを解いて
誰も救えないボクは………ボクはッ………!!
落ちる直前、走馬灯のように思い出が駆け巡った、次の瞬間
“今から飛びます”
ふらり、と身体が浮いて
足の下から、地面がなくなった
Ending1 『“__”へ導きます』
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編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。