裁判が始まり、裁判官が白熊に指示を出す。
「白熊弁護士、起訴状を朗読してください。」
裁判になると、いつものふわふわした雰囲気は白熊から見受けられなくなった。
「少弐夫妻は、息子である原告(優のこと)に監禁に近い環境下で無理矢理勉強させ、夢を諦めさせ、時に交友関係をも壊されました。この事による精神的ダメージは計り知れません。こちらからは、原告と少弐夫妻の絶縁、及び今後一切の接触禁止を要求します。」
目に一切の光を通さぬ程、白熊は集中し、場の緊張感を更に高めた。
自然と空気は重くなった。
「今白熊弁護士が朗読した起訴状の中に事実と異なる点はありますか?」
裁判官が両親に問った。
両親は勿論、「事実ではない。過剰に取りすぎ」だの「息子を傷つけた記憶はない」だの言っていた。
「田中弁護士(先方の弁護士)のご意見は如何ですか?」
「少弐夫妻は、原告を愛するばかり、多少教育熱心になってしまった部分もありました。しかし、お互い見つめ直せば家族関係を良好に戻す事も可能なはずです。私は、先方の要求が度を超えていると主張します。」
さっきまでのオロオロした姿はどこへ行ったのか、先方の弁護士は落ち着きを取り戻し、意見を言った。
この静かな空間は、居心地が良いとは言わないが、両親の喚き声が聞こえないというのは良いところであると思う。
「それでは白熊弁護士、冒頭陳述(証拠によって事実を明らかにするための陳述)をお願いします。」
「はい。原告によって、部屋には3台の防犯カメラ。風呂食事学校以外の外出禁止。及び、親しい友達ができると破局させようと裏工作を行っていた事が証言されています。
また、原告の夢が画家であったことに対し少弐夫妻は、大激怒し、原告の描いた絵を全て目の前で破き、ごみ捨て場に捨てたらしく、原告の学校机には、ごみ捨て場から拾い集めセロハンテープで止められた沢山の絵がしまわれていました。
それに加え、少弐夫妻は原告が美術の宿題で出された風景画を描いている際に、画家の夢を諦めていないのだと勘違いし、暴行を加え今でもその傷は癒えていません。
これは完全なる虐待と言えるでしょう。」
白熊は手元にある、セロハンテープで止められた絵や、優の診察書を提示しつつそう言った。
先方の弁護士も、まさかここまでしているとは思わなかった様でたじろいでいた。
「うるさい!貴方達に何がわかるのよ!子供を育てた経験無いくせに人の教育方針に口を出さないでよ!」
母は再び喚いた。
父もそれに賛同した。
白熊は机を叩きつけ、大きな音を出して2人を黙らせると、話を続けた。
「確かに、自分の息子に自分の会社を継がせたいという気持ちはわかります。しかし、これは少弐夫妻が自分勝手であるとしか言い様がありません。
もし、本当に優君自身を愛しているなら、今ここで喚いたりしません。自分達が悪かったと自覚し、優君に謝るべきです。
貴方達は親としてではなく人として…どこか間違った部分があるのではないでしょうか。」
そして、白熊は1度深呼吸を行い、一言。
「裁判官…判断願います。」
その後、裁判官達が別室で真偽を行い、結論が言い渡された。
私達は裁判に勝ち、両親と縁を切り、両親とは接触禁止となった。
優の願い立てで、虐待として被害届を出すことはなかったが、両親…いや、少弐夫妻は最後まで喚き散らしていた。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。