第14話

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2020/05/23 10:00
裁判までの時間はあっという間だった。

まずは、弁護士を通して示談(裁判を行わず当事者同士で和解条約を交わすこと)を取り付けようとした。

その日から少弐君は私の家で生活を始めた。
そして、約束の日。
「よくも私達の優ちゃんを…この誘拐犯!」
呼び出した場所には既に両親がおり、母は私を怒鳴り喚いた。
「誘拐ではなく預かってただけですよ。私を捨てたお母さん。」
冷静に返すも相手は怒り狂っている。

3歳児にも劣らない喚きっぷりを見せた。
「そんなことはない!優ちゃんが私達の元から離れたいなんて思うはずないわ!!」
「いや、彼が貴方達に向けて訴訟しようとしたのですが…」
すると、黙っていた父も口を開ける。
「そんなはずはない。そもそも未成年が裁判を起こせるはずがない」
「そうよそうよ!」と、賛同する母。

その声をぶった斬る白熊。
「いえいえ、そんなことはありませんよ。後見人という者さえ居れば裁判は起こせますよ。実際に虐待を受けた10歳の少女が訴訟を起こした際には、弁護士を後見人として選任したりしていました。」
無意識に口が閉まり歯を食いしばる両親。

私はため息混じりの息を吐いて言う。
「私達が求めるのは、少弐君…いえ…優と貴方達両親が縁を切る事と、今後一切の接触禁止です。」
すると、母は再度喚く。
「優ちゃん!この化け猫に騙されてるのよ!私達の元へ帰って来て?ね?」
優はハッキリと多少大きめの声で言った。
「嫌です。姉さんを悪い人だと思えないし、何より貴方達の元へ帰りたくないので…」
「そんなこと言わないで!この女は、私達に捨てられた腹いせに私達から貴方を奪おうとしてるのよ!」
「姉さんが初めに僕に話しかけて来た時、姉さんは自分の両親が事故で死んでいないと言った。施設の人が気を使ってそう言っていたみたいだけれど、僕のこと弟であると知る前から、僕に優しくしてくれていたのは事実だし、真剣に取り合ってくれていたのも伝わった。1度姉さんを知ったら僕はもう二度と貴方達を好きになれない。」
私の涙腺が熱くなると共に、両親の怒りも頂点へ達しているのがわかった。

先方の弁護士は話に着いていけずオロオロしており、逆に白熊は「そこまで断言するんだ」と笑い、楽しそうにしていた。
「まぁ、示談は断られたので、早速ですが裁判しましょうか。」
「いや、裁判なら裁判前に会っちゃダメでしょ!!」
白熊の奇想天外な発言に、私は間髪入れずにツッコんだ。

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