あれから幾ら走ったか分からない。
幾ら経ったのかも分からない。
気付くと俺は、4号に刺さっていた槍を持って、
血を流す4号を只見つめていた。
傷口を塞ぐことも、止血するのも不可能だろう。
そんな声が流れた瞬間、
俺の持っていた槍は液体のような不思議な動きをして、
4号の傷へ向かい、一瞬で傷を塞いだ。
だが、そんなことは俺の気にするところではなかった。
該当個体。
それは…間違いなく、4号のことだろう。
インストール。
それは、おそらく…
初期化後の人格のこと、だろう。
終わった。
もう、終わってしまったんだ。
もう…これは、4号じゃないんだ。
これは、もう、俺らの仲間じゃ、ない。
ただの…俺らの敵だ。
叫びを発すると同時に、こちらに襲いかかってきた。
が、全てを感情に任せている、そんな戦い方だ。
元々非力な4号は、持ち前の頭脳で俺と肩を並べる所まで来た。
なのに、動きが単調で読みやすい。
当たったとしても攻撃が軽い。
良くも悪くも、"そこまで脅威ではない"。
何を見ているのか覗きこんだ妖しく揺らぐ真紅の瞳に、
あの時とは違う恐怖を覚えた。
あの時は、会話ができた。
4号としての意識があった。
だけど、今は?
話が通じない。
4号ではない。
4号と同じ見た目をした敵。
なのに。
なのに俺は、4号に…攻撃、できない。
仮に殺してしまったら。
中身がもう4号とは違っても、4号を殺すのと同義だ。
かといって…どうする?
記憶を戻す?
戻しても、人格から変わっているのだから意味はないだろう。
プログラムを元に戻す?
…どうやって?
あんな莫大な量、俺は覚えていない。
何の為に一人で来たと…
...待て。何故8号がいる?
確かワールドツアーの準備が忙しいとか。
あの二人を放ってまで来るような事例か?
そろそろ受け流す力が尽きそうだ。
合図と同時に右足を軸に180度回転し、
なんとか進行方向に置かれた拳を避け、
閉まる隔壁に向かって走る。
あと数十センチの隙間に滑り込む。
あと1m,50cm...
段々と隔壁が降りていく。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。