第5話

ターニングポイント
15
2024/07/16 15:56 更新
あれから幾ら走ったか分からない。
幾ら経ったのかも分からない。
気付くと俺は、4号に刺さっていた槍を持って、
血を流す4号を只見つめていた。
傷口を塞ぐことも、止血するのも不可能だろう。
音割れした機械音声
インストール完了。
該当個体の修復を開始。
そんな声が流れた瞬間、
俺の持っていた槍は液体のような不思議な動きをして、
4号の傷へ向かい、一瞬で傷を塞いだ。
だが、そんなことは俺の気にするところではなかった。
旧3号
インストール…完、了…?
該当個体。
それは…間違いなく、4号のことだろう。
インストール。
それは、おそらく…
初期化後の人格のこと、だろう。
終わった。
もう、終わってしまったんだ。
音割れした機械音声
該当個体の修復完了。
システムを再起動。__エラー発生。
もう…これは、4号じゃないんだ。
音割れした機械音声
緊急プログラムを解除及び再展開。
全ての個体のリミッターを破壊。
これは、もう、俺らの仲間4号じゃ、ない。
ただの…俺らの敵だ。
Δ
[文字に起こすことが不可能な叫び]
叫びを発すると同時に、こちらに襲いかかってきた。
旧3号
ッチ…
が、全てを感情に任せている、そんな戦い方だ。
元々非力な4号は、持ち前の頭脳で俺と肩を並べる所まで来た。
なのに、動きが単調で読みやすい。
当たったとしても攻撃が軽い。
良くも悪くも、"そこまで脅威ではない"。
何を見ているのか覗きこんだ妖しく揺らぐ真紅の瞳に、
あの時とは違う恐怖を覚えた。
あの時は、会話ができた。
4号としての意識があった。
だけど、今は?
話が通じない。
4号ではない。
4号と同じ見た目をした敵。
なのに。
なのに俺は、4号に…攻撃、できない。
仮に殺してしまったら。
中身がもう4号とは違っても、4号を殺すのと同義だ。
かといって…どうする?
記憶を戻す?
戻しても、人格根っこから変わっているのだから意味はないだろう。
プログラムを元に戻す?
…どうやって?
あんな莫大な量、俺は覚えていない。
3号
[ザーッ…ピピッ…司…司令!聞こえますか!?]
旧3号
[3号?どうした?]
3号
[どうしたじゃないですよ!通信も繋がらないし…
今8号がそっちに向かってますから、
それまで一人で耐えててください!]
旧3号
8号が!?…って通信切れた!!
何の為に一人で来たと…
...待て。何故8号がいる?
確かワールドツアーの準備が忙しいとか。
あの二人テンタクルズを放ってまで来るような事例か?
8号
早い再会ですね、3号さん。
旧3号
連絡から到着までが早すぎるだろ!
8号
ワタシはここの構造を知ってますので。
旧3号
はぁ?
つーか助けに来たんじゃないのかよ!?
そろそろ受け流す力が尽きそうだ。
8号
...昔は、一週間少し幽閉してプログラムを治しました。
今回も、同じ方法をとるしかないでしょう。
旧3号
昔?
8号
その話は後です。
とにかく、ワタシについてきてください。
もちろん、デルタを連れて。
旧3号
待っ...なんでお前がその名前を...
8号
いいから早く...手遅れになる前に。
旧3号
おい本当にこっちで合ってるんだよな!?
8号
...多分?
旧3号
多分じゃねえよこちとら間違えられたら死ぬんだよ!!
8号
そろそろです。
旧3号
聞けよ!
8号
私の合図と同時に、全力で引き返してください。
旧3号
は?
8号
今です!!
合図と同時に右足を軸に180度回転し、
なんとか進行方向に置かれた拳を避け、
閉まる隔壁に向かって走る。
あと数十センチの隙間に滑り込む。
あと1m,50cm...
段々と隔壁が降りていく。
旧3号
間に合えッ...!!

プリ小説オーディオドラマ