玲奈の方に手をかざす。
声が頭に流れ込んでくる。
心がズンッと重くなる。
まるで、大きな重りをのせられたみたいに。
わかってる。
私に価値なんかないし、暗いし。
いったい、何を期待してたんだろう。
兄さんが、私のことを、よく思っていたからって、玲奈まで、そうだって勘違いして。
『死んでくれてよかった』
なんて、思われてるのにね。
兄さんが、口を開く。
珍しく、真剣な表情。
どうしたんだろうか。
玲奈の、表情が少し変わる。
でも、また、笑みを浮かべて答える。
嘘ばっかり。
私のことなんて、嫌いなくせに。
でも、兄さんはそんなことに気づかない。
わらって、玲奈に言葉を返す。
真剣な顔。
決意は固いみたいだ。
なんで、こんなに優しいんだろう。
こんな人が、近くにいて、守ってくれるんだったら、私のこと嫌ってる人がいても、死ななければよかったなあ。
ちょっと、そんなことが頭をよぎる。
まあ、私は死んだから、もう、しょうがないよね。
どうせなら、どうせなら、死ぬんだから。
あの二人の心を読んでしまおう。
兄さんの言葉が、私の背中を優しくさすって、優しく背中を押してくれた気がした。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。