私がこころの内を知りたい人、それは親だ。
むかしから、私をほったらかしにしていた母親と、再婚してできた義父。
あの人達は、私のことを、邪険にしていた。
だから、絶対嫌っているはずだ。
だけど、何で自分がそんなふうに扱われていたのか、知りたい気もしてきた。
そう思いながら、家のドアを開ける。
この時間なら、二人はまだ家に居るはず。
リビングに向かうと、やはりいた。
二人でソファに座ってテレビを見ている。
楽しそうに。
私なんか、最初から居なかったみたい。
誰にも見えない涙が溢れてくる。
やっぱり、誰にも見えないからこそ、思いっきり泣ける。
二人に近づく。
まずは、義父の方から。
義父は私のことどう思っているのだろう。
予想はしてた。
私なんて、この人には大切にされてない。
消えた方が良い存在だ。
そう思いながら、今度は母親の方に手をかざす。
母親の、心の中に私は居なかった。
嫌われていたわけじゃない。
母親の心に、『あなたの名字あなた』はいなかったのだ。
そう思いながら、私は家を出た。
友達や、兄さんが味方してくれて、生き返りたいと、一瞬は思った。
でも、やっぱり、私が居ない方が良いという存在の方が多いんだ。
さあ、そろそろ本当に死ぬときかな。
そう思っていたとき、後ろから声が聞こえてきた。
振り向くとやはり、神林龍樹くん。
私の最初で最後の初恋の相手が居た。
恐る恐るそう聞く。
私は、誰にも見えないはずなのに。
何で神林くんはわかるんだろう。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。