明らかに素っ気ない返事をしてきた。避けているのが丸見えだ。
ぐうの音も出なかった。
別にこれを聞いたところで、何もならなかったり、実現不可能な者だったら意味がなくなる。それに、京のいた頃と今とではVISTYの置かれている状況が違う。
京は俺が来る前に注文したであろうコーヒーのカップの蓋を指でなぞる。コーヒーに反射している自分の顔を見ている瞳は凛々しく、綺麗だな、としか言いようがなかった。
顔の向きは変えず、その夕焼けを閉じ込めたような透明な瞳だけを俺の方に向けた。
当たったのか、京は顔をくしゃ、と歪ませた。
……なるほど。京はきっと罪悪感でも抱いているのかもしれない。VISTYに対する本当の気持ちを暴露してから変な気持ちになっていたのだろう。
誰にも言ってこなかった本心を打ち明けた事で妙な違和感でも持っていたのだろうか。
呆れ半分で呟いた。
……ここ、俺も本心を打ち明ける絶好のチャンスでは?
テーブルに肘をつき、頬杖をついた。
京に向かって優しく微笑む。すると、京は目を少しだが見開いた。
少し睨むと、京はふふっと綺麗な顔で笑った。
先程までは堅苦しかった京が嘘みたいだ。まるで前の……VISTYの頃の京を見ているかの様に感じた。
少しだけど、心を開いてくれたのかもしれない。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!