あの日から先輩とは喋っていない
早く伝えとけば今隣にいたのは俺だったのかな
なんて後悔しても遅いんだ
太我抜き?
なんかあったのかな?
達也くんは一瞬目を見開いて
すぐに真剣な顔をした
バレてたのかよ…
格好付けてたのはずいじゃん…
なんだよ…
もう…
今まで我慢した分の涙が溢れて出てきた
そう言って俺の頭をいっぱい撫でてくれた
しばらく泣いて少し落ち着いてきて
達也くんには話そう
そう思った
達也くんは歯を見せてにっこり笑って
そう言ってくれた
溢れて止まらない涙
泣きながら食べたご飯は味なんてしなくて
だけど
達也くんがいてくれたから
美味しく感じた
俯いて何も喋らない先輩を家に招いた
見てないふりをして家に入ればよかったのに
家に入って
俺がお茶を準備していると先輩が口を開いた
なぜか嫌な予感がした
先輩が立ち上がって俺の方に歩いてきた
聞きたくない
直感的にそう思った
俺はそう言って先輩の背中を押しながら玄関に向かった
家に2人きり
手繋ぐくらい
頭撫でるくらい
ハグするくらい
キスするくらい
なんでもいいから
先輩に触れたかったな
ガチャッ…
先輩からのLINE
俺はすぐに達也くんに電話した
泣くのは我慢だ
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!