ミノは生徒会室の扉を静かに閉めた。
スンミンの要望通り、綺麗に片付け、荷物はすでにまとめ終えていた。
明日の朝、「当選キム・スンミン」と記された紙が校舎の入り口の掲示板に貼り出される。
その作業を終えた今、ミノの仕事はすべて終わった。
もう、あの椅子に座ることはない。
ミノは最後に誰もいない部屋を振り返り、深く一礼をしてから、扉を閉めた。
扉の向こうに続く静かな廊下を歩きながら、心のどこかがぽっかりと空いたような気がした。
けれど、それは寂しさではなく、どこか穏やかな感情だった。
ミノは静かに校舎を後にし、そのまま家へと向かった。
そして、いつもの帰り道。
家の近くの公園の入り口で、見覚えのある後ろ姿が目に入った。
ジソンだ。
ベンチに座り、ゆっくりと足を揺らしながら、誰かを待っているようだった。
前と変わらず、少し猫背気味の小さな背中。
だが、以前よりもどこか力強さを感じる気がした。
ミノは思わず声をかける。
その瞬間、ジソンがパッと顔を上げた。
ジソンはそう言って、にこっと笑った。
ミノは少し驚いた。
最後に公園で出会った時のジソンとは、どこか違う笑顔に見えた。
ジソンがそう言いながら、ポンポンとベンチの隣の席を叩いた。
ミノは軽く微笑み、ジソンの隣に腰を下ろす。
頷くと、ジソンは少し期待するような表情で尋ねた。
ミノは一瞬、答えに詰まり、しかしすぐに笑って首を横に振った。
ジソンは少し肩をすくめた後、そりゃそうだよねと苦笑いする。
そして、空を見上げながら、小さく息を吐いた。
ふと、ミノがそう問いかけた。
ジソンは少し驚いたように目を瞬かせ、ミノを見た。
しばらく沈黙が流れる。
ミノは、正直な答えを聞きたいと思った。
ジソンは迷いなくそう答えた。
ミノは思わず、ジソンの横顔を見つめた。
彼は本当に変わったのだ。
自分がいなくても、ちゃんと居場所を見つけ、そこで生きていけるようになった。
ヒョンジンやヨンボクと並んで笑っている姿を見たときもそう思ったが、
今、こうして自分に向かってはっきりと「楽しい」と言えたことが、何よりの証拠だった。
ミノはふっと微笑む。
夜空に、少し冷たい風が吹き抜けた。
ジソンはふと、何かを思い出したように呟いた。
ミノは意外そうに眉を上げる。
ジソンは少し恥ずかしそうに頷いた。
そう言って、彼は照れくさそうに視線を逸らした。
これまでずっと、自分のことを「何の取り柄もない」と思っていたジソンが、
誰かに認められたことを素直に喜んでいるのがわかる。
スンミン?
ミノは少し驚いた。
あの孤高のキム・スンミンがジソンを誘った?
ジソンはそう言いながら、少し嬉しそうに微笑んだ。
…スンミンが?面白い?
ミノは思わず軽く吹き出しそうになった。
ミノは曖昧に相槌を打ちながら、スンミンのことを思い出す。
そういえば、スンミンは軽音部だったな。
部員が少なすぎる、というかスンミンしかいなくて潰れそうになっていたけど、生徒会の権限でなんとか廃部を回避していた。
あの時、スンミンは「部活の存続は学校全体の文化活動の活性化に繋がるべきだ」とか、もっともらしいことを言っていたが。
そんなスンミンが、まさかジソンを軽音部に誘うとは。
あいつ、何考えてんだ?
変なこと考えてないよな?
でも、意外と…二人は気が合うのかもしれない。
何となくそんな気がした。
スンミンは賢いがゆえに何でも自分でできてしまう。
人に頼るなんてことをせずとも輝けた。
そんな完璧主義の彼に心の拠り所となれるような友達ができれば__
彼はきっとミノのことなんてあっという間に追い越せてしまう。
ミノはどこかもどかしい気持ちになりながら、公園の風に揺れる木々を見つめた。















編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。