朝、玄関をくぐると、すぐに何人もの生徒が駆け寄ってきた。
「スンミン先輩、おめでとうございます!」
「次の生徒会、期待してます!」
「これからよろしくお願いします!」
正式に生徒会長に選ばれたばかりのスンミンは、次々にかけられる祝福の言葉に、
ただ淡々と「ありがとう」と返しながら、校舎へと歩いていく。
__特に喜びはなかった。
最初から対抗馬はいなかったし、結果は分かりきっていたことだ。
選挙で「勝った」という達成感もない。
だから、今こうして周囲が祝ってくれることも、どこか他人事のような気がしていた。
僕が生徒会長になるのは当然。
スンミン自身がそう思っていたし、周囲もそう思っている。
このポジションを得たからといって、何かが変わるわけじゃない。
むしろ、これからの責任が増えるだけだ。
__それでも。
教室の扉を開けると、ヨンボクとヒョンジンが駆け寄ってきた。
ヨンボクがニコッと笑い、ヒョンジンも「すごいね、生徒会長」と肩を軽く叩く。
スンミンは自然とそう答えた。
彼らとは、普通に会話をする。
でも、特別「親しい」と思ったことはなかった。
スンミンには、特別仲のいい友達はいない。
作ろうとも思わなかった。
ミノみたいに自然と周りに人が集まるタイプでもないし、別に一人が寂しいわけじゃない。
周囲が勝手に「キム・スンミンはすごい」と一目置いた。
そしてスンミン自身も、自分の中のプライドが邪魔していた。
誰かと距離を縮めることが、なぜか怖かった。
でも__
袖を軽く引かれる感触に、思わず振り向いた。
そこにいたのは、ジソンだった。
彼はいつものように少しだけ恥ずかしそうに、それでもちゃんとこちらを見て、そう言った。
スンミンは、ふと気づく。
この子は、いつの間にか自分の中に入り込んでいた。
無理に距離を縮めるわけでもなく、必要以上に踏み込むわけでもなく。
ただ、自然に隣にいる。
ミノがなぜ、すべてを捨ててまでこの子を守ろうとしたのか__
少しだけ、その理由が分かったような気がした。
授業が終わり、ざわざわとした教室の中で、生徒たちは次々と返されたテストを手にしている。
赤ペンでつけられた点数を見て喜ぶ者、
ため息をつく者、
全てを諦めたような顔をしている者。
そんな中、スンミンは淡々と答案用紙を受け取った。
100点。
当然の結果だった。
スンミンは特に感情もなく、答案をカバンにしまおうとした__その時。
いきなり肩を叩かれ振り向くと、そこには満面の笑みを浮かべたジソンがいた。
ジソンはまるで自分が取ったかのように感嘆の声を上げる。
だが、次の瞬間、自分の答案を手に持って、こう付け加えた。
スンミンの目の前に突き出された紙には__
15点。
そして、その横には赤字で大きく書かれた「再試」のマーク。
スンミンは至極真面目な顔で言い放つ。
ジソンは軽くスンミンの肩を叩き、拗ねたように唇を尖らせる。
ジソンが一生懸命言い訳するように答案を指差す。
スンミンはそれをじっと見て、冷静に指摘した。
ジソンは一瞬固まり、マジか…と天を仰いだ。
ジソンは甘えるような笑顔を向ける。
スンミンは少しだけため息をついたが、すぐに微笑んだ。
スンミンがそう言うと、ジソンはえぇ~と情けない声を上げる。
__すると。
どこからともなく、ヒョンジンが割り込んできた。
とヒョンジンは堂々と答える。
スンミンは呆れたようにジソンとヒョンジンを交互に見た。
ジソンとヒョンジンが無駄に団結し、スンミンは思わず苦笑する。
スンミンは疲れたように頭を押さえながら、これからの苦労を想像していた。
こんなんで本当に大丈夫か?
そんなスンミンの不安をよそに、ジソンとヒョンジンは一緒に頑張ろうぜ!と意気揚々としていた。

















編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。