慎太郎side
正直に言うと、
この店に入った瞬間から、だいたい察してた。
北斗の声。
いつもと同じ、落ち着いたトーン。
でもなー……長い付き合いだと分かるんだよ。
“気持ちが決まってる人の声”。
視線を動かすと、
窓際の席。
あなたの下の名前が、コーヒーを飲みながら外を見てる。
……はい、もう答え出てます。
俺がそう言うと、
あなたの下の名前は少し驚いた顔をしてから笑った。
その言い方がさ、
“お気に入りの店”じゃなくて
“居場所”なんだよね。
カウンターの中に戻ると、
北斗が小声で言う。
珍しい。
こんな聞き方。
俺は肩をすくめた。
北斗は何も言わない。
でも否定もしない。
あー、これは完全に自覚してるやつ。
その答えが、
もう十分すぎるくらい真剣で。
俺は少しだけ笑って言った。
北斗は一瞬だけ目を伏せて、
それから小さく頷いた。
あなたの下の名前が帰るとき、
いつもよりほんの少しだけ、
北斗を見る時間が長かった。
北斗も同じ。
……ほら、やっぱり。
この2人、
大きな言葉はいらないんだよ。
同じ時間を重ねて、
同じ場所に戻ってきて、
気づいたら同じ音になってる。
心の中でそう呟きながら、
俺は空いたカップを片付けた。
静かだけど、
ちゃんと幸せになるやつ。
それが一番いい。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。