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第2話

番外編【ザルビア】
19
2024/06/06 06:15
陸軍隊長として荒れ狂う南の戦地セラム国で戦っていた彼は地面に倒れ込んだ
ニック
ニック
くっそ…ここで終わりなのか…?
彼はついさっき運悪く地雷に当てられてしまったのだ。



体はもう動かず死というものがすぐ近くにあるのが分かる。



情けなさと怒りで目の前がよく見えない
どうすることも出来ず目の前の死を受け入れようとした時だ、ふいに自分の娘のミラのことと家族のことが頭に浮かんだ。
ミラは歌がとびきりじょうずで笑った顔が天使のように可愛い自慢の娘だ。妻が3年前に他界してから1人でミラをずっと育ててきた。そんな彼自分にとってミラは自分の命よりも大切な存在だった。
今すぐにでもミラに会いたい。
そう思って必死に体を動かそうとするのに体は思うように動いてくれない。少し動くだけで激痛が走る…
目の前の死は避けられないものだと確信した
ならばせめて最後にミラの声が聞きたい。
いつもの笑顔や、ミラの温もりに触れたい
ニック
ニック
まだ、死にたくない…
そう強く願った時だ
不意に目の前が眩い光に包まれた
なにかに引き込まれていくような感覚がする…
ニック
ニック
これが…魔法と言うやつか…
何故だろう、少しも怖くないし、なんだか暖かい…












我に返ると、そこはとても広い花園だった。
色々な花や木々が見事に咲いていて、春の花から冬の花まで多くの種類がある。不思議なことにどの花も少しも枯れていない それどころか今咲きましたよといわんばかりな咲きっぷりだ。



花園に見とれていると突然後ろから声をかけられた
少女
少女
こんにちは、ご要件はなんでしょう
振り向くとそこにはとても可愛い少女が立っていた
はだの色は白く目は透き通った翡翠色、綺麗に手入れされている髪の毛が風に揺れるととても美しい。可愛いと言うより、美しいという言葉が良く似合う。
でも彼女の目の中は空っぽで何も無い
声にも抑揚がない。まるで感情のない人形のようだ
ニック
ニック
お、お客様?
困ってそう聞き返すと、彼女は空っぽの目のまま答える
少女
少女
もちろんお客様ですよ。だって先程死にかけませんでした?
そう言えばと、さっき死にかけていたことを思い出す。
ニック
ニック
なぜ、知っているんですか?
少女
少女
死にかけていないお客様がここに導かれるわけが無いからです。
ニック
ニック
導かれる?…どういうことでしょうか?
知らなかったのですか。と彼女は話し出した
少女
少女
ここは魔法街、お客様の住む世界とはまた次元の違う魔法の存在する世界です。
そしてここは誰時庭園と呼ばれる花園、私の私有地です。
そしてここに導かれる条件は人生の最期を迎えるお客様が、叶えたい願いがあること、です。
ここでは、色々なお客様の最期の願いを叶える仕事をしているのです。
そしてお客様の思いは、ここに咲きます。
ニック
ニック
咲く?
少女
少女
そうですここにある花は全てここに来たお客様たちの思いが咲いたものですよ。思いは不滅と言うでしょう。なのでここに咲いている花たちは全て守のまじないがかかってます。
難しくてよく分からないが、ここが魔法の世界ということはわかった。
ニック
ニック
じゃあ私の願いも?
少女
少女
えぇ、もちろん叶えますよ。
ですが一つだけ
寿命を伸ばしたいという願いをお受けすることはできません。あなたがいずれ死ぬというのは運命ですから
ニック
ニック
わかりました。ではそれ以外ならなんでも?
少女
少女
はい
そして彼は少女に、大切な娘がいることを話した。
少女
少女
なるほど、そういう事ですか。わかりました
ではこれを見てください
そしいって少女が、自分の服に着いていた懐中時計を差し出してきた。
少女
少女
これはあなたの残りの寿命です。
残り10分程度ですね。
あなたの元に娘さんを呼ぶことも出来ますが、あなたの元に呼ぶにはとても危険な場所なので、あなたの記憶な中から1番幸せだと感じた瞬間を抜き出しました。そこではあなたは自由に行動することができますのでご自由になさってください。10分ですから大切になさってください。
ニック
ニック
分かりました。どうもありがとう
少女
少女
あ、ちょっと待ってください。
ニック
ニック
はい
少女
少女
少し失礼します
そう言って少女は彼の胸に手を当てなにかブツブツ言うと、手を離して言った
少女
少女
結構です。
少女
少女
それでは
その言葉を聞くと…とたんに視界がぼやけた
気づくとそこは自分の家だった。
目の前には、妻も、ミラもいる。
周りを見るに、今は家族で夕食を取っているところのようだ。
やっぱり家族はいつでも暖かい
そんなことを思っていると、不意にミラが声をかけてきた。
ミラ
ミラ
お父さん…?食べないの?
妻
そうよねぇ笑あなた…どうかしたの?
ニック
ニック
あ、いや…なんでもないんだ
さぁ!食べよう!
妻
そうね(*´˘`*)
ミラ
ミラ
ねぇお父さん?
ニック
ニック
なに?
ミラ
ミラ
あのね!あのね!私ね!新しい歌が歌えるようになったの!
ニック
ニック
そうなのかい?じゃあ聞かせてくれよ!
ミラ
ミラ
うん!
ミラ
ミラ
.・*’’*・.♬.・*’’*・.♬
そう
この歌だ、この声が聞きたかった、またみんなで笑いたかった…
ニック
ニック
ッ…泣
ミラ
ミラ
お父さん!?
妻
あなた大丈夫?!
ごめん…ごめんなぁ
最後まで一緒にいてやれなくて
でも大好きだから
 
彼はそっとミラと妻を抱きしめた。
妻
あら…急にどうしたのかしらねぇ🤭
ミラ
ミラ
わぁ!やったぁ!
ニック
ニック
父さんは…いつでもずっと家族を愛してるから、
いつだって思ってるからな…
ミラ
ミラ
私も!お父さんもお母さんもだーいすき!
妻
えぇ私もよ☺️
家族の温もりを感じる瞬間
彼にとってその時間は何よりも幸せだった。
ニック
ニック
(これでもう十分思いは伝わった…)
そう思い瞳を閉じる







ずっとずっとあわよくば自分のことを一時も忘れず覚えていて欲しい
でも…そんな事がなくても…自分が家族を愛していた。その事さえ伝わっていれば
ニック
ニック
(俺はそれでいいんだ…)
気づくとまた戦地に戻っていて
慌ただしい銃声が聞こえてくる。
でもそんなことはもう気にしなかった
ニック
ニック
愛しているよ…
そうつぶやくと
彼はそっと目を閉じた
その頃少女はと言うと自分の屋敷で本を読んでいるところだった
少女
少女
おや、時間ですか…
なんの花が咲いたのでしょう
そう言いながら花園に向かった
少女
少女
…赤色のザルビア…ですか
確か花言葉は 【家族愛】【燃える思い】
少女は新しく咲いたザルビアの花びらをそっと撫でた
そしてふわっと、、少しだけ目元を緩ませた
少女
少女
どうやらあの方の家族への愛情は本物のようですね。とても美しい花です。
彼女は手早く守りの呪いをかけると、また、自分の屋敷への道を辿り出した








番外編 𝑒𝑛𝑑


(この小説では、このように本編以外でもちょくちょく番外編を挟みます!)

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