メールを無視していると、今度は電話がかかってきた。
無視するわけにも行かず、通話ボタンを押す。
バタバタとベランダに出て下を見ると、まだ浴衣姿の長尾が俺の部屋に向かって全力で手を振っていた。
近所迷惑だからやめろ。
そう言って入り口のロックを解除した。
待てよ……………あなた先輩、どうしよう?
ーあなたー
風呂から上がると、そこには彼が用意してくれた着替えが綺麗に折りたたまれていた。
真っ白の長袖のシャツと………しかない。
道枝くん、下忘れてますけど。
後で借りよう。この長袖のやつ、でかいからギリ太ももまで隠れるし。
お姉さん居るらしいし、お姉さんのかな?これ。
前髪ををいつものように上げてポンパして風呂場を出る。
…………とその時。
小声で洗面所の扉の向こうから言われて、私は扉を開けようとした手を止めた。
彼は何か焦っているようだ。
突然扉が開いて、手を引かれ、どこかの部屋のクローゼットに押し込められた。
クローゼットの中は真っ暗。隙間から見える部屋の光だけが頼りだ。
ここ…………道枝くんの部屋か。多分。
隙間から様子を伺っていると、『お邪魔しまーす!』という元気のいい二人の声が聞こえた。
…………二人?二人いるの?
足音が遠ざかり、道枝くんの呆れたようなため息が聞こえた。
高橋くんも謙杜くんもリビングの方に行ったのか、声が聞こえなくなる。
そして、私はさっきから光の見える方から目を離せない。
暗闇を見ると何かがいるような気がして怖くなるんだ。
早く……………早く、戻ってきて。
じゃあなんで困った顔してるの。
私今帰ったほうがいいよね。
縋るような目に何も言えなくなった。
こんな怒られた子犬みたいな目されたら、従わざるを得ないじゃん。













編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。